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トルコリラ20%急落し最安値、米の追加関税圧迫 大統領ら発言も歯止めかからず

2018年08月11日(土)04時22分

 8月10日、トルコリラが対ドルで一時約20%急落し、過去最安値を更新した。1日の下落率としては2001年以来の大きさとなる。通貨リラ(2018年 ロイター/Murad Sezer)

[イスタンブール/アンカラ 10日 ロイター] - 10日の取引で、トルコリラが対ドルで一時約20%急落し、過去最安値を更新した。1日の下落率としては2001年以来の大きさとなる。

その後は下げ幅を幾分縮小し、約16%安の6.44リラ近辺で推移している。

トランプ米大統領がトルコに対するアルミ・鉄鋼関税引き上げを表明したことを引き金にリラ売りは加速。リラ急落阻止に向け、エルドアン大統領が演説、アルバイラク財務相が新たな経済計画を公表したものの、トルコ下落にさほど歯止めはかかっていない。

リラは年初来では40%超値下がり。エルドアン大統領が金融政策に及ぼす影響への懸念や米国との関係悪化などが圧迫要因となってきている。

トランプ大統領はこの日、ツイッターへの投稿で、トルコからの輸入関税についてアルミニウムを20%、鉄鋼を50%に引き上げることを承認したことを明らかにした。リラについては「非常に強いドルに対し急落している!」と指摘し、われわれのトルコとの関係は現在は良くない!」と述べた。

トルコ通商省は米国の関税引き上げ措置は世界貿易機関(WTO)の規定に反すると批判した。

こうした中、エルドアン大統領は国民に対し、保有するドルや金をリラに両替するよう訴えた。

大統領は北東部の都市バイブルトでの演説で「もしドルや金を枕の下に入れているのなら、銀行でリラに両替すべきだ」と発言。「これは国家の戦いであり、経済戦争を仕掛けた者に対するわが国民の報いとなる」と語った。「ドルがわれわれの道を阻むことはできない。心配無用だ」とも述べた。

アルバイラク財務相も新経済計画を発表。中央銀行の独立性や財政規律の強化を盛り込んだものの、投資家の不安を払拭し、リラ急落阻止に向けた詳細には踏み込まなかった。

TDセキュリティーズの新興国市場戦略主任、クリスチャン・マジオ氏は「(トランプ大統領の)ツイートはトルコの剣よりも強し」とし、新経済計画に新味はなかったと述べた。

リラ急落の影響は世界市場にも波及。欧州株式市場ではトルコへのエクスポージャーの大きい銀行株が急落し、米株式市場でも銀行株に売りが出ている。

他のトルコ資産も売りを浴び、ドル建てトルコ国債は急落し、多くが過去最安値を更新。iシェアーズMSCIトルコETF(上場投資信託)も急落し、2009年3月以来の低水準を付けた。

トルコ国債の保証コストも急上昇。5年物クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)は2009年3月以来の高水準となった。

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