ニュース速報

ビジネス

焦点:7月世界国債市場、昨年3月来の大きな値上がり デルタ株や中銀要因

2021年08月02日(月)14時35分

 7月の世界の国債市場は2020年3月以来で、月間ベースで最大の値上がりを享受した。新型コロナウイルスのデルタ株を巡るリスクや、金融緩和の巻き戻しはまだずっと先になるとのメッセージを主要中銀が打ち出したことが背景だ。2015年8月、北京の株価ボード前で撮影(2021年 ロイター/Jason Lee)

[30日 ロイター] - 7月の世界の国債市場は2020年3月以来で、月間ベースで最大の値上がりを享受した。新型コロナウイルスのデルタ株を巡るリスクや、金融緩和の巻き戻しはまだずっと先になるとのメッセージを主要中銀が打ち出したことが背景だ。

経済回復が見込まれたほど強くないとの懸念がまず相場を押し上げ、値下がりに賭けていた市場参加者が競って買い戻しに動いたことで、値上がりが増幅されたという。

7月14日のパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長によるタカ派色を弱めた発言に続き、22日の欧州中央銀行(ECB)理事会は新たな2%のインフレ目標に向けた決意を表明。中国人民銀行は銀行の預金準備率を引き下げた。こうした中銀の行動は、相場を引き続き支えた。

ドイツとオーストリアの10年国債利回りの低下はいずれも20年1月以来の大きさとなり、月間で20ベーシスポイント(bp)を超えた。英10年国債も15bp近く下がった。

米10年国債利回りはコロナ大流行が引き起こした昨年3月のパニック相場以来の大きな低下となった。

エリック・スターザ・インベストメンツのポートフォリオマネジャー、パスカル・ペローン氏は「これまでで経験した中でもベストな月に入る」とし、米国債が大半を主導したと指摘した。

インフレ連動債(TIPS)の値上がりも目立った。政府の10年の実質借り入れコストはドイツと米国で約30bp低下し、過去最低を記録した。

米国のTIPSは7月の米消費者物価指数(CPI)が5%上昇と13年ぶりの高ペースとなったことを受けて、28日までの週に過去最多の32億ドルが流入した。

ドイツ10年国債の実質利回りは月間で、ドラギECB総裁(当時)がユーロ圏を債務危機から救う努力を強調した12年7月以来の大きな低下となった。

ただ、実質利回りの記録的な低下はしばしば懸念すべき兆候とも見なされる。経済成長の将来への悲観的な見方の表れだからだ。だから、今年の力強い経済回復を見込む多くの債券投資家は、債券相場への弱気な見方を維持したままだ。

銀行や資産運用の23人に対するロイター調査では、15人がなおも今年末の米10年国債利回りを約2%と予想している。

JPモルガンとバンク・オブ・アメリカは、ドイツ10年国債利回りが年末までには現在のマイナス0.45%から0%弱に上昇すると予想している。

ロイター
Copyright (C) 2021 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トルコCPI、4月は前年比+69.8% 22年以来

ビジネス

ドル/円、一時152.75円 週初から3%超の円高

ビジネス

仏クレディ・アグリコル、第1半期は55%増益 投資

ビジネス

ECB利下げ、年内3回の公算大 堅調な成長で=ギリ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 7

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 8

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 9

    「複雑で自由で多様」...日本アニメがこれからも世界…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中