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アングル:好決算に渋い株価反応、後引く「安川ショック」

2021年04月27日(火)15時22分

4月27日、 好調な企業業績に対する日本株市場の反応が渋くなっている。都内の株価ボードで2020年10月撮影(2021年 ロイター/Issei Kato)

水野文也

[東京 27日 ロイター] - 好調な企業業績に対する日本株市場の反応が渋くなっている。3月期決算発表シーズンが本格化する中、好決算にもかかわらず株価が下落する銘柄が少なくない。株価水準が前年度に比べ高くなり、評価が厳しくなっている面もあるが、2月期の安川電機の株価が決算発表後に急落したことで、業績に対する「ハードル」が高くなったとの指摘も出ている。

<市場予測下回れば厳しい評価に>

日本電産は22日、2022年3月期の連結営業利益(国際会計基準)予想は1800億円(前期比12.5%増)と発表した。新型コロナの感染再拡大や半導体の減産などで「少し保守的」(永守重信会長)な見通しだったが、マーケットは市場予想の1991億円を下回ったことを嫌気し、翌日の株価は約5%下落した。

今回の決算シーズンでは、好決算期待が大きい銘柄を先取り買いする動きがほとんどみられていない。しかし、足元の株価がそれほど上昇していなくても、決算見通しが市場予想を少しでも下回れば今のマーケットは容赦がない。

日本電産も、22日の決算発表前の株価は1月に第3・四半期決算を発表した時点よりも2%以上低く、期待感で株価が高水準に位置していたわけではなかったにもかかわらず、株価の反応は厳しかった。

市場の決算発表に対する「態度」が冷たくなるきっかけとなったのは、安川電機の2月期決算発表後の株価反応だとみられている。同社が4月9日に開示した22年2月期予想は連結営業利益が54%増だったが、翌日の株価は7%超の下落。市場予想平均値の432億円に対し12億円下回ったことが嫌気された。

「誤差の範囲内。好業績に変わりはない」(国内証券)との声も多かったが、翌日の株価は7%以上の下落。「これで業績期待に対するハードルが高くなり、先取り買いができなくなった」と、SBI証券の投資調査部長、鈴木英之氏は指摘する。

<大目にみる雰囲気薄れる>

医療情報サイトを運営するエムスリーは23日、合理的な算定が困難との理由で今期見通しを非開示にしたことが嫌気され、発表翌日に5%を超す急落となった。「前期で11期連続増益となり、今後も高い成長が期待できる」(国内証券)との声も少なくないが、昨年までみられた非開示でも大目にみるといった雰囲気は薄れている。

株価の反応が良いのは、明確に大幅増益見通しを示す決算だ。23日に22年3月期の営業利益が前年比3倍の見通しになると発表した東京製鉄は、サプライズ感を伴い翌営業日に一時ストップ高となった。

ただ、現時点ではこうしたケースは少ない。「コロナ禍に対する警戒が再び高まっている今のタイミングで、ほとんどの企業は慎重な見通しを立てる」と、岡三オンライン証券・チーフストラテジストの伊藤嘉洋氏は指摘する。

2020年度の日経平均株価の上昇率は54.2%と、史上3番目の高さとなった。3月以降、調整局面を迎えているが、水準は前年度から大きく切り上がっている。コロナ禍から回復する企業業績を相場は織り込んできており、決算評価が厳しいのは市場の「評価基準」が高くなっていることも要因だ。

今回の決算発表シーズンでは、例年になく公表期限ぎりぎりの5月13日、14日に開示が集中する傾向がみられる。「計画策定に苦慮している企業が多いとみられるものの、決算を見極めたいとのムードが強い点を踏まえれば、5月中旬まで相場がもたつくことも想定できそうだ」(岡地証券・投資情報室長の森裕恭氏)との見方もある。

発表当日株価 翌日騰落率 決算概要

安川電機 5910円 -7.1% 54%営業増益見込みだが、市場予測に届かず

日本電産 13970円 -5.1% 今期最高益予想も市場予測を下回る。

ディスコ 37700円 -0.4% 今期予想は第1四半期のみ開示したが、市場予測より下振れ。

エムスリー 8058円 -5.8% 今期予想を開示せず。

東京製鉄 908円 +12.2% 前期大幅減益から今期は3倍増益予想。

キヤノン 2652.0円 -1.3% 今12月期予想を大幅上方修正。市場予測も上回る。

*決算当日の株価と翌営業日終値の株価騰落率

(水野文也 編集:伊賀大記)

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