ニュース速報

ビジネス

日銀、金融政策は現状維持へ 引き続き資金繰り・市場安定に重心

2020年07月10日(金)16時03分

 日銀は7月14―15日に開く金融政策決定会合で、金融政策の現状維持を決める見通しだ。写真は都内の日銀本店前で2009年3月撮影(2020年 ロイター/Yuriko Nakao)

[東京 10日 ロイター] - 日銀は14―15日に開く金融政策決定会合で、金融政策の現状維持を決める見通しだ。新型コロナウイルスの感染拡大で5月にかけて景気が大きく落ち込んだものの、経済活動の再開や政府の補正予算などで年末にかけて緩やかな戻り歩調をたどるとの見方が日銀では多い。ただ、先行きの不確実性が大きい状況は続く見通しで、日銀は3月以降打ち出した一連の政策を実行することで、企業などの資金繰り支援と金融市場の安定維持に万全を期す方針とみられる。

6月調査日銀短観では大企業・製造業の足元の業況判断DIが11年ぶりの低水準となったものの、先行きは改善見込みとなった。日銀内では、設備投資計画も底堅いとの見方が出ている。

日銀が8日に発表した6月の貸出・預金動向によると、銀行・信金計の貸出平残は前年比6.2%増。伸び率は過去最高を更新し、政府・日銀の資金繰り支援策の効果が出ていることが示された。

日銀のコロナ対応は、資金繰り支援の特別プログラム、ドルや円の潤沢な供給、上場株式投信(ETF)などの積極購入の3本柱。日銀は政策効果を見極めながら、この3本柱で対応していくとみられる。

今回の決定会合では「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)が取りまとめられる。緊急事態宣言の1カ月延長などを踏まえ、20年度の実質国内総生産(GDP)予想は前回4月のリポート時のマイナス5.0%―マイナス3.0%から若干、下方修正される可能性がある。ただ、経済活動の再開や20年度2次補正予算などにより、年末にかけて景気が緩やかに回復するとの基本シナリオは維持されるとみられる。

前回の展望リポートでは、新型コロナの流行に伴う先行き不透明感が非常に強かったことから、各政策委員はGDPや物価の見通しを最大1%ポイントのレンジで作成し、展望リポートでは委員の見通しの中央値は示されなかった。今回は元に戻り、政策委員見通しの中央値が示される可能性がある。

9日の支店長会議後の記者会見では、景気の先行きに慎重な見方が聞かれた。大阪支店の山田泰弘支店長(理事)は「経済活動の再開で最悪期を脱したとの認識は(管内)みな持っていると思うが、下方に不確実性が高いということを同時に共通認識として持っている」とした。展望リポートでは、先行きの経済には不確実性が大きいことを強調する見通しだ。

支店長会議の冒頭、黒田東彦総裁は「当面、新型コロナウイルスの影響を注視し、必要があれば躊躇(ちゅうちょ)なく追加緩和措置を講じる」と改めて述べた。

4月の支店長会議では政策金利の見通しに触れなかったが、9日は政策金利について「現在の長短金利の水準、またはそれを下回る水準で推移することを想定している」と述べた。黒田総裁は政策金利の見通しを2%の物価目標とひもづけることはしなかった。日銀では、当面は新型コロナ対応が中心テーマとなり、物価目標に向けた政策対応への回帰はまだ先になるとの声が出ている。

(和田崇彦、木原麗花)

ロイター
Copyright (C) 2020 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、次期FRB議長にウォーシュ氏かハセット

ビジネス

アングル:トランプ関税が生んだ新潮流、中国企業がベ

ワールド

アングル:米国などからトップ研究者誘致へ、カナダが

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、方向感欠く取引 来週の日銀
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    受け入れ難い和平案、迫られる軍備拡張──ウクライナの選択肢は「一つ」
  • 4
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 5
    【揺らぐ中国、攻めの高市】柯隆氏「台湾騒動は高市…
  • 6
    「前を閉めてくれ...」F1観戦モデルの「超密着コーデ…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 9
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 10
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 7
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 8
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 9
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中