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航空各社、収入確保へ旅客機での貨物輸送に活路 米は580億ドルの支援策

2020年03月26日(木)20時45分

 3月26日、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて旅客需要が急減する中、航空各社の間では、旅客機を貨物輸送に転用して収入を維持しようとする動きが出ている。写真はニューヨークで21日撮影(2020年 ロイター/Eduardo Munoz)

[シドニー/シカゴ 26日 ロイター] - 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて旅客需要が急減する中、航空各社の間では、旅客機を貨物輸送に転用して収入を確保しようとする動きが出ている。

米では、上院を25日に通過した前例のない規模の航空業界支援策に、従業員への給与支払いを援助する条件として、人員削減の禁止などが盛り込まれた。

この支援策では、総額580億ドルのうち約半分が、75万人に及ぶ航空業界従事者の給与支払いに向けた助成金となる。援助を受ける会社は、9月30日まで人員削減が禁止されるほか、労働協約の変更もできない。

米下院もこの法案を27日に可決する見込みで、トランプ大統領もすぐに署名することを確約している。

収入源の確保と機体の稼働が急務となった各社は、相次いで貨物輸送の強化に乗り出している。

米デルタ航空とニュージーランド航空は、旅客機を貨物輸送用のチャーター便として利用する方向で検討中だ。ハワイアン航空は、小型機でハワイ諸島内を結ぶ貨物便を増便した。アラブ首長国連邦(UAE)のエティハド航空も、ボーイングの787型旅客機(ドリームライナー)を貨物輸送に転用、インドやタイ、シンガポールなどへ週34便を運航すると発表した。

国際航空運送協会(IATA)のドジュニアック事務局長は声明で「渡航制限と需要の急減により、旅客輸送事業は成立しない。航空業界にとっては暗黒期だ」と述べた。

IATAの試算では、新型ウイルスの感染拡大により、業界全体で今年は2520億ドルの収入減となる見通し。IATAは日本を含むアジア・太平洋地域18カ国の政府に対し、航空業界への緊急支援を要請した。

一方、アジア圏ではシンガポール、オーストラリア、ニュージーランドの各国政府が航空会社向けの支援策を発表しているが、この中には、従業員の一時帰休や運航停止を禁じる条項は含まれていない。

世界の航空貨物のおよそ半分は通常、貨物専用機ではなく旅客機の貨物室に混載して運搬される。このため、旅客便の運航停止は貨物輸送能力の急減にもつながっている。

航空調査会社シリウムによると、23─24日に稼働しなかった飛行機は、世界中でおよそ1800機に上る。IATAは、医薬品など緊急物資の輸送も滞っていると指摘した。

IATAによると、世界の航空輸送量は2月に10%減、年間では15─20%減になる見通し。

*内容を追加しました。

ロイター
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