ニュース速報

ビジネス

米FRB議長「あらゆる手段で適切に対応」、新型肺炎リスクで

2020年02月29日(土)07時08分

2月28日、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は声明を発表し、米経済は引き続き底堅いものの、新型コロナウイルスの感染拡大が経済へのリスクになっており、景気の下支えに向けFRBとして適切に対応すると表明した。写真は2月12日、議会証言を終えたパウエル議長(2020年 ロイター/Yuri Gripas)

[28日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は28日、声明を発表し、米経済は引き続き底堅いものの、新型コロナウイルスの感染拡大が経済へのリスクになっており、景気の下支えに向けFRBとして適切に対応すると表明した。ただ、米経済は引き続き全般的に良好に推移しているとの認識を示した。

議長は「米経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)は依然として力強い一方、新型ウイルスが経済活動へのリスクとして台頭している。FRBは種々の動向や経済の先行きへの影響を注視しつつ、景気の下支えに向けあらゆる手段を活用しながら適切に対応する」と述べた。

声明は1段落で3行のみだが、FRBが3月の連邦公開市場委員会(FOMC)で利下げするとの観測が高まる中で発表され、今回の声明により、新型ウイルスの感染拡大が続き経済に影響を及ぼせば、FRBに政策対応の意思があることが示された。実際、声明発表を受け、急落していた米株価は下げ幅を縮小する場面もあった。

IIIキャピタル・マネジメントの首席エコノミスト、カリム・バスタ氏はパウエル議長の声明が発表される前に、「『FRBは状況を注意深く監視しており、経済への影響について結論づけるのは時期尚早だが、持続的な拡大に向け金融政策でできることを行うと約束する』といった内容の『再保険』的なインタビューをパウエル議長がなぜ行わないのか不明だ」と述べた。

ノーザントラストのエコノミスト、カール・タンネンバウム氏は「新型ウイルスに起因するリスクにより、FRBは春にも利下げに踏み切る」との見方を示した。

パウエル議長が声明を発表するまで、FRB当局者は米経済指標が新型ウイルスの影響をまだ受けていないとの事実に重点を置き、新型ウイルスは封じ込められ、経済が影響を受けたとしてもわずかなものにとどまるとの見方を示していた。ただこの日、市場では緩和観測が高まり、FRBがこうした観測を無視するのは難しい状態になっていた。

パウエル議長は2019年6月に通商政策を巡る先行き不透明性に直面した際、「適切に対応する」との表現を使用。この表現を使った2週間後のFOMCでFRBは利下げは見送ったが、7月に25ベーシスポイント(bp)の緩和に踏み切った。FRBはその後、9月と10月に25bpの追加利下げを実施している。

今回の声明で新型ウイルスに起因するリスクを「台頭しつつある(evolving)」と形容し、景気を「支援(support)」するためにあらゆる手段を利用すると表明したことで、パウエル議長はより大きな幅で、より速いペースの利下げに道を開いた可能性がある。

FRBのフェデラル・ファンド(FF)金利誘導目標は現在1.50─1.75%。短期金融市場では、3月17─18日のFOMCで1.00─1.25%に引き下げられる確率が80%を超えていることが織り込まれているほか、7月までに0.50─0.75%に引き下げられるとの予想も出ている。

*情報を追加しました。

ロイター
Copyright (C) 2020 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ドル一時急落、154円後半まで約2円 介入警戒の売

ワールド

中国主席「中米はパートナーであるべき」、米国務長官

ビジネス

円安、物価上昇通じて賃金に波及するリスクに警戒感=

ビジネス

ユーロ圏銀行融資、3月も低調 家計向けは10年ぶり
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 5

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 6

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 7

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 8

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中