ニュース速報

ビジネス

アングル:新興国市場、新型ウイルスの逆風切り抜けか

2020年02月17日(月)13時49分

 2月17日、新型コロナウイルスの感染拡大による世界的な成長鈍化への懸念により、新興国市場は先行きに暗雲が垂れ込めているが、それでも投資家が徐々に戻りつつある。写真は北京にある証券会社で1月撮影(2020年 ロイター/Jason Lee)

[ニューヨーク 14日 ロイター] - 新型コロナウイルスの感染拡大による世界的な成長鈍化への懸念により、新興国市場は先行きに暗雲が垂れ込めているが、それでも投資家が徐々に戻りつつある。

リッパーの週間資金動向調査によると、新興国市場は2週連続で資金が流出して株式と通貨が大きく下げたが、その翌週には上場投資信託(ETF)に7億3000万ドル近くが流入した。

MSCI新興国株指数<.MSCIEF>は2月初旬の安値から4%持ち直したが、年初来ではまだマイナス圏にある。一方、MSCI新興国通貨指数<.MIEM00000CUS>は、アジアから中南米にかけての幅広い通貨が売られたことを受けて、引き続き大幅に下げている。

新型ウイルスの流行前に新興国株は12月初旬から上昇基調にあった。アナリストが世界的な成長の再加速を見込み、米国と中国が貿易協議で第1段階の合意に至ったためだ。MSCI新興国株指数は中国株の比重が3分の1近くに上る。

リッパーのデータによると、新興国ETFは昨年10月末以降、一貫して資金が流入し、月間ベースで流出となったことはない。

パー・スターリング・キャピタル・マネジメントのディレクター、ロバート・フィップス氏は新興国について「バリュエーションがとても魅力的だ。景気に回復の兆しが見えている」と指摘。「新型コロナウイルスの流行が収束すれば、元の基調に戻るだろう」と述べた。

新興国株を保有していなかったフィップス氏は同株をポートフォリオに加え、今では全体に占める比率が6%程度になっている。ドル安で新興国株の保有比率を高めざるを得なくなりそうだという。ドルが下落すると、ドル建てで借り入れを行っている国は債務の返済が容易になる。

新興国資産はこの10年間以上にわたり米国株をアンダーパフォームしているが、ブラックロックやJPモルガン、UBSグローバル・ウェルス・マネジメントなど他の金融機関も、今年の新興国市場に明るい見通しを持っている。

トールバッケン・キャピタル・アドバイザーズのマイケル・パーブス最高経営責任者(CEO)によると、新興国株がこのところ底堅い様相を強めているのは、非常に長い期間にわたり低迷していることが大きな要因だという。パーブス氏は「新興国株が売り込まれることはない。すでに大量に売られているからだ」と述べた。

投資家のリスク回避の強さを図る指標である、「CBOE新興国市場ETFボラティリティ指数<.VXEEM>」と「CBOEボラティリティ指数<.VIX>」の差は14日午後の時点で3.6ポイント。米中間の通商紛争を巡る緊張がピークに近かった昨年5月には7.25ポイントだった。

新型ウイルス流行の経済への影響ははっきりしない。アナリストの間からは、中国の国内総生産(GDP)の年成長率は同国政府が以前発表した6%に届かず、4-5%の間にとどまるとの予想も出ている。

しかし中国の成長は鈍化が第1・四半期でほぼ収まり、今年末に向けて加速の余地があるとみるアナリストもいる。

ジェントラストの最高投資責任者、ジム・ベソー氏は新型ウイルス問題について「比較的短期の要因だ。4月か5月には話題に上らなくなっているだろう」と予想した。

(April Joyner記者)

ロイター
Copyright (C) 2020 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

インドGDP、7─9月期は前年同期比8.2%増 予

ワールド

今年の台湾GDP、15年ぶりの高成長に AI需要急

ビジネス

伊第3四半期GDP改定値、0.1%増に上方修正 輸

ビジネス

独失業者数、11月は前月比1000人増 予想下回る
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 3
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 6
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 7
    「攻めの一着すぎ?」 国歌パフォーマンスの「強めコ…
  • 8
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 9
    がん患者の歯のX線画像に映った「真っ黒な空洞」...…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 3
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 4
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 5
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 6
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 7
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 10
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中