ニュース速報

ビジネス

中国PPI、11月は5カ月連続下落 豚肉高騰でCPIは8年ぶり高い伸び

2019年12月10日(火)15時22分

12月10日、中国国家統計局が10日発表した11月の生産者物価指数(PPI)は、軟調な需要や輸出の低迷が響いて5カ月連続で前年比で下落した。北京のスーパーで2018年1月撮影(2019年 ロイター/Jason Lee)

[北京 10日 ロイター] - 中国国家統計局が10日発表した11月の生産者物価指数(PPI)は、軟調な需要や輸出の低迷が響いて5カ月連続で前年比で下落した。一方、消費者物価指数(CPI)は食品の値上がりで約8年ぶりの大幅な上昇率を記録した。

11月のPPIは前年比1.4%低下。市場予想は1.5%低下、10月は1.6%低下だった。

11月のCPIは前年比4.5%上昇し、2012年1月以来の大幅な伸びを記録。アフリカ豚コレラの感染拡大による豚肉価格の急騰が主因で、上昇率は市場予想の4.2%、10月の3.8%をともに上回った。

ただ、食品とエネルギーを除外したコアインフレ率は前年比1.4%上昇と穏やかな伸びにとどまり、しかも10月の1.5%上昇から減速した。

交通銀行のアナリスト、Liu Xuezhi氏は「CPIの高い伸びは中国の金融政策に無論、影響を及ぼすが、大局的に見ると、広範囲なインフレ高進のリスクは見込んでいない。このため、現在の緩和バイアスがかかった金融政策に大きな影響は与えないだろう」と分析した。

一方、PPIの低下は、製造業活動に回復の兆しがあるものの、需要が引き続き弱いことを示した。

キャピタル・エコノミクスのシニア中国エコノミスト、ジュリアン・エバンズ・プリチャード氏は「需要サイドの価格押し上げ圧力が強まる兆しはほとんどない」と指摘。「PPIの構成要素である、食品を含む消費財の価格上昇は、工業製品の大幅な価格低下に完全に打ち消された」と述べた。

PPIを分野別でみると、石油・ガス精製や化学繊維製造部門が落ち込んだ。

中国は米国と「第1段階」の通商合意に向けて交渉を続けているが、主要な部分でなお溝がある。合意が成立したとしても、経済の減速は当面続くと予想され、政府高官からは2020年の成長目標を6%程度に引き下げるべきとの声も聞かれる。

中国政府は、市場金利や地方政府の特別債発行などの面から数々の景気支援策を打っている。しかし、過去に打ち出したような「洪水のような」大規模な景気対策には否定的だ。

<消費者物価は高止まり>

PPIとは対照的にCPIは大きく上昇。豚肉などの肉の価格高騰が続いているためだ。

豚肉の卸価格の騰勢は幾分和らいだものの、なお1年前の倍以上となっている。

アナリストは、豚肉消費が1年で最も高まる春節(旧正月)に向けて需要は高止まると予想する。前週、財政省は米国産豚肉・大豆の一部について追加関税を免除すると発表した。

経済成長が政府目標(6─6.5%)の下限に向けて減速するなかでの消費者物価の大幅上昇は、当局にとって悩ましい問題だ。

2019年のCPI上昇率の政府目標は約3%。1─11月は2.8%上昇だった。

ゴールドマン・サックスは最近のノートで、CPI上昇率が2020年初めに4─5%になる見込みだとして、来年の目標はこれまでの既定値の3%レベルから引き上げられるとの見方を示した。

*アナリストのコメントを追加しました

ロイター
Copyright (C) 2019 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米肥満薬開発メッツェラ、ファイザーの100億ドル買

ワールド

米最高裁、「フードスタンプ」全額支給命令を一時差し

ワールド

アングル:国連気候会議30年、地球温暖化対策は道半

ワールド

ポートランド州兵派遣は違法、米連邦地裁が判断 政権
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2人の若者...最悪の勘違いと、残酷すぎた結末
  • 3
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統領にキスを迫る男性を捉えた「衝撃映像」に広がる波紋
  • 4
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 7
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 8
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 9
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 10
    長時間フライトでこれは地獄...前に座る女性の「あり…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 7
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 10
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中