ニュース速報

ビジネス

アングル:中国ロボット産業、貿易戦争でパワーダウンか

2018年08月26日(日)09時23分

 8月23日、米国政府がさらに2000億ドルの追加関税徴収を決めれば、中国のロボット生産業者の状況はさらに悪化するとアナリストは指摘。写真は17日、北京で開催された「世界ロボット大会」の会場(2018年 ロイター/Jason Lee)

Cate Cadell

[北京 23日 ロイター] - 中国・北京で開催中の「世界ロボット大会」では、子どもの背丈ほどの「パワーレンジャー」姿で踊るピンクとブルーのロボットたちが注目を集めた。

中国と米国の合弁企業アバターマインド製のロボットたちは、将来的に店舗販売員や教師、主婦の補助の役割を担う。

アバターマインドのジョン・オストレム最高経営責任者(CEO)は「当社は企業などだけではなく個人でも支払える価格で販売したいと考えているが、トランプ米大統領による関税が影響しそうだ」と述べた。

中国のロボット生産は7月に年率6.3%増と、5月の35.1%増から大幅に減速した。

国家発展改革委員会(NDRC)は、通商の影響ではないとしているが、アナリストらは米中間の貿易紛争がロボット部品などの生産に間違いなく影響していると主張する。米中の通商協議中は、中国の製造業者が生産活動を見合わせているからだ。

INGホールセール・バンキングのエコノミスト、アイリス・パン氏は「(貿易紛争が)影響しないはずがない。すでに輸出製造業者の決断が一部先延ばしされている」と指摘する。

米国は22日夜中過ぎ、中国製品160億ドル分への追加関税徴収を開始した。ロボットは対象品目として具体的に明示はされていないが、電子製品や自動車部品、自動製造される製品が対象となっている。最初の関税では工業用ロボットが対象に含まれていた。

アナリストは、米国がさらに2000億ドルの追加関税徴収を決めれば、中国のロボット生産業者の状況はさらに悪化すると指摘する。

中国はハイテク産業など10業種を10年がかりで育成する「中国製造2025」と呼ぶ政策を掲げ、ロボット産業もそのうちの1つとなっている。

中国企業の一部は、米国との通商関係が失われることになっても、習近平国家主席の広域経済圏構想「一帯一路」政策が産業を押し上げてくれると期待する。

また、少なくとも現在の中国での生産コストの安さが、米国による関税分を相殺してくれると期待する声もある。

中国の医療用ロボットメーカー、リメボットのマネジャー、リ・シュアイ氏は、同社ロボットに対する米食品医薬品局(FDA)の承認を申請中だと話す。「フランスには似た製品があるが、価格は何千万ドルだ。一方、当社の製品は500万ー600万ドルに抑えられていて、だからこそ優位に立てる」と強調した。

ロイター
Copyright (C) 2018 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア、ウクライナ東部ルハンスク州全域を支配下に 

ワールド

タイ憲法裁、首相の職務停止命じる 失職巡る裁判中

ビジネス

仏ルノー、上期112億ドルの特損計上へ 日産株巡り

ワールド

マスク氏企業への補助金削減、DOGEが検討すべき=
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 2
    ワニに襲われ女性が死亡...カヌー転覆後に水中へ引きずり込まれる
  • 3
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とんでもないモノ」に仰天
  • 4
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 5
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 6
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 7
    「パイロットとCAが...」暴露動画が示した「機内での…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    顧客の経営課題に寄り添う──「経営のプロ」の視点を…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 3
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 4
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 5
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 6
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 7
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 8
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 9
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 10
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中