ニュース速報

ビジネス

アングル:指標に見るトルコ金融市場の「惨状」

2018年07月14日(土)09時16分

7月12日、トルコの金融市場が徹底的に打ちのめされている。イスタンブールの証券取引所で2017年10月撮影(2018年 ロイター/Murad Sezer)

[ロンドン 12日 ロイター] - トルコの金融市場が徹底的に打ちのめされている。通貨リラは今年に入って20%以上急落し、過去最安値を更新。株式市場もここ2年余りで最大の下落幅を記録したほか、国債も売られている。

市場の混乱ぶりと、他の主要新興国市場に比べトルコの資産価値がどう評価されているかを以下に示した。

◎事態悪化物語る指数

ファゾム・コンサルティング社がまとめたソブリン発行体の財務の脆弱性を示す指数は、トルコを取り巻く状況がいかに悪化しているかを物語っている。この指数はデフォルトリスク、インフレリスク、各国の10年債利回り中央銀行の政策を総合的に加味し、0から10までの段階で表示。政府債務の面で1未満なら基本的に問題がなく、3を超えると不安があることを意味する。

◎リラ安

現在の市場混乱の原因は、2010年からずっと軟化してきた通貨リラがさらに急落したことだ。

リラ安の主な影響は2つある。まず物価を押し上げるものの、中央銀行が利上げで対処しようにもエルドアン大統領が反対であることを承知しており、問題が生じる。

もう1つは、政府、企業や個人のドル建て債務の返済コストが高くなることだ。国際決済銀行(BIS)によると、トルコのドル建て債務は2000億ドルで、メキシコの2650億ドルに迫る水準だ。

一方でリラは、過小評価されているようにも見える。ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズが採用する購買力平価モデルによれば、現時点で32%過小評価されている。リラの次に過小評価されている南アフリカランドは25%、メキシコのペソは18%。

◎利回り高騰

国債売りはすさまじい。中銀がここ数カ月で金利を5%引き上げたものの、トルコの物価上昇率が15%に達している実情を踏まえると、債券の実質利回りは1%を下回り、投資家にとって必ずしも魅力的ではない。

トルコと他の主要新興国の利回りを比較しても、どんな状況かが分かる。2年債利回りで見るとトルコは12日に約20%と過去最高水準となり、ブラジルの8.6%の2倍以上で、バングラデシュの4倍。両国ともムーディーズとフィッチの格付けはトルコと同じ「BBマイナス/Ba2」だ。

◎与信拡大のつけ

トルコの高成長は借り入れブームに後押しされてきただけに、危うい状況になりかねない。同国の与信の前年比伸び率は20%と、バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチが動向を追っている新興国の中で、アルゼンチンとコンゴ民主共和国に次ぐ高さとなっている。

国際金融協会(IIF)のデータでは、トルコの銀行の預貸率は100%超で、資金調達市場で大規模な機能不全が起きれば流動性の面で厄介な事態になりかねない。南アフリカ、チリ、メキシコ、コロンビアも同様のリスクを抱える。

ただ、不良債権比率は3%と、ギリシャの46%やウクライナの56%よりもずっと小さい。

◎株価は割安

株式市場のバリュエーションの主な尺度である株価収益率(PER)に目を向けると、イスタンブール証券取引所のBIST100種指数銘柄のPERは他の新興国株を大幅に下回っている。

(Marc Jones記者)

ロイター
Copyright (C) 2018 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、選挙での共和党不振「政府閉鎖が一因」

ワールド

プーチン氏、核実験再開の提案起草を指示 トランプ氏

ビジネス

米ADP民間雇用、10月は4.2万人増 大幅に回復

ワールド

UPS貨物機墜落事故、死者9人に 空港は一部除き再
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面に ロシア軍が8倍の主力部隊を投入
  • 4
    もはや大卒に何の意味が? 借金して大学を出ても「商…
  • 5
    カナダ、インドからの留学申請74%を却下...大幅上昇…
  • 6
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 7
    若いホホジロザメを捕食する「シャークハンター」シ…
  • 8
    NY市長に「社会主義」候補当選、マムダニ・ショック…
  • 9
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 10
    「なんだコイツ!」網戸の工事中に「まさかの巨大生…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 9
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中