ニュース速報

ビジネス

国内ベンチャー、メルカリ機に投資対象の地位確立=JVCA会長

2018年07月06日(金)13時48分

 7月6日、日本ベンチャーキャピタル協会(JVCA)の仮屋薗聡一会長は、メルカリが先月、今年最大の規模で東証マザーズ市場に上場したことで、日本のベンチャーキャピタルは機関投資家の間でアセットクラスとしての地位を確立できたとの考えを示した。写真はロゴ、都内の本社で6月撮影(2018年 ロイター/Issei Kato)

[東京 6日 ロイター] - 日本ベンチャーキャピタル協会(JVCA)の仮屋薗聡一会長は、フリーマーケットアプリ大手のメルカリ<4385.T>が先月、今年最大の規模で東証マザーズ市場に上場したことで、日本のベンチャーキャピタルは機関投資家の間でアセットクラスとしての地位を確立できたとの考えを示した。4日実施したロイターとのインタビューで語った。

「今回メルカリは上場時の時価総額4000億円でマザーズにIPO(新規株式公開)したが、これが5年前ならば100億─200億円での上場となっていただろう。100億のIPOは、海外や大手の機関投資家にとっては小さ過ぎて関心を持たないレベル。ここ数年で投資家の層も厚くなり、資本市場の質・量ともに進化した。リスクマネーの供給力も右肩上がりで高まっている」

ユニコーン(企業価値10億ドル超の未上場ベンチャー)が上場する日本初のケースとなったメルカリのIPO。公開価格の3000円を67%も上回る初値をつけたが、同時に既存株主から見ればエグジット(投資資金の回収)イベントであり、メルカリというベンチャーにリスクマネーを供給した出資者らにとっても大きな成功体験となった。

「後半の(資金調達)ラウンドでは、VC(ベンチャー投資会社)だけでなく機関投資家も多く参加していた。年間4%とかの目標目線で運用する彼らにとって、今回の投資は1年か2年で何倍、IRR(内部収益率)が100%超えという圧倒的な成功体験となった。だからこそ、そういうアロケーションをすべきとの認識も高まっている」

出資者として株式上場前のメルカリを支えたのは、独立系VCのグロービス・キャピタル・パートナーズ、政府系金融の日本政策投資銀行[DBJPN.UN]、事業会社の三井物産<8031.T>、コーポレート・ベンチャーキャピタル(CVC)の日本郵政キャピタルなど多彩な顔ぶれ。ファンドを通じた間接出資も含めれば、国内の主要機関投資家が名を連ね、まさに「オールジャパン」と言える陣容となった。

世界的な低金利の長期化を背景にした運用難から、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)やゆうちょ銀行<7182.T>、生命保険各社をはじめとする国内の大手機関投資家は、ここ数年、債券や株式といった伝統的資産以外に対象を広げる「オルタナティブ(代替)投資」を積極化。ベンチャーキャピタルは、ヘッジファンドや不動産などと並ぶオルタナ資産の1つだ。

「日本のベンチャーキャピタルは、リターンが出ない、規模が小さいという理由から、長い間ずっと無視されてきた資産クラス。それが今回の成功体験を機に、国内機関投資家にきちんと投資対象のアセットクラスとして認識された。今後はその認識を海外にも広めたい」

*写真を差し替えました。

(植竹知子 編集:伊賀大記)

ロイター
Copyright (C) 2018 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

利上げの可能性、物価上昇継続なら「非常に高い」=日

ワールド

アングル:ホームレス化の危機にAIが救いの手、米自

ワールド

アングル:印総選挙、LGBTQ活動家は失望 同性婚

ワールド

北朝鮮、黄海でミサイル発射実験=KCNA
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ公式」とは?...順番に当てはめるだけで論理的な文章に

  • 3

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32、経済状況が悪くないのに深刻さを増す背景

  • 4

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 5

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 6

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 7

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 8

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 9

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中