ニュース速報

焦点:日米通商交渉、大統領選へ早期決着演出 自動車関税が引き続き焦点

2019年08月26日(月)14時00分

竹本能文

[東京 26日 ロイター] - 日米首脳は25日の会談で通商交渉の大枠で合意、9月にも予定されている次回の首脳会談で署名を目指す方針を確認した。来年に大統領選を控え、通商面での成果を急ぐトランプ大統領に配慮し、早期決着を演出した恰好だ。ただ、焦点の自動車では、米国の輸入関税撤廃が先送りされたほか、日本車に対する追加関税の発動回避の確約は取れていないもようで、発動期限の11月まで日米間の交渉が引き続き注目される。

<大統領選配慮、早期合意演出>

主要国(G7)首脳会議(サミット)に合わせフランス・ビアリッツでトランプ大統領と会談した安倍晋三首相は、会見で日米通商交渉が原則で合意したと明らかにし、9月の国連総会前後に予定されている米国での首脳会談で署名を目指す方針を強調した。

戦後、日米間の通商交渉は日本側に厳しい結果となった例が多く、与党内では「日米通商交渉で合意を急ぐ必要はまったくない」との声も多かった。それでも安倍首相や茂木再生相が大筋合意を急いだのは「9月までに合意しないと、日本側で関連法案を臨時国会で通すことが出来ず、再選を目指すトランプ大統領に好ましくないため」(政府高官周辺)。米国は「中国・EUとの通商交渉が座礁しかかっているなか、日本との(交渉で)早期の成果を求めており、日米合意が遅れれば遅れるほど、米側の要求が厳しくなるリスクがある」(政府関係者)との判断もあったようだ。

<米、自動車輸入関税撤廃は先送り>

首脳会談に同席したライトハイザー米通商代表部(USTR)代表は、日本側が撤廃を要請していた米国による自動車および部品に対する関税ついては変更がないが、農産品では日本で70億ドルを超える規模の市場が開放され、牛肉、豚肉、小麦、乳製品、ワイン、エタノールといった製品が恩恵を受けるとの見解を示した。

昨年9月に両首脳が署名した共同宣言は、日本の農産品市場開放は環太平洋連携協定(TPP)など過去の協定での譲歩内容の範囲とするとともに、米国の自動車生産・雇用を拡大すると明記していた。日本側は日系自動車メーカーの米国現地生産が拡大しやすいよう、米国の関税引き下げを求めていたが、米側は慎重姿勢を堅持したようだ。

一方、トランプ大統領によると、日本は、余剰になっている米国産トウモロコシを購入することに同意した。安倍首相はトウモロコシ購入の「可能性」に言及し、国内の害虫被害に対応し、民間セクターによる米国産トウモロコシの早期購入を支援する緊急措置を講じる必要があるとの認識を示した。九州に上陸した害虫ツマジロクサヨトウにより国内で飼料用トウモロコシを栽培している農家に被害が出ている。

<日本車への追加関税には楽観論も>

首脳会談に先立ち茂木敏充経済再生相とライトハイザー米通商代表部(USTR)代表は3日にわたりワシントンで協議した。ある経済官庁幹部は、日米間で最大の焦点である、日本車に対する米国の追加関税に関し、「日本は除外するとの確約は取れなかったのではないか」と説明する。

菅義偉官房長官は26日の会見で、米国通商拡大法232条に基づく自動車への高関税適用の回避を取り付けることが出来たかとの質問に「交渉が継続中でコメントを差し控えたい」と述べている。

米国は安全保障を理由に日欧からの輸入自動車に対して25%の追加関税を課す検討しており、今年5月には課税判断の期限を11月まで半年間先送りしている。

もっとも日本政府内では「日本は欧州連合(EU)と異なり米国との対話に応じており、追加関税を課されるリスクは小さい」(政府関係者)との楽観論が多い。「ドイツの自動車メーカーと異なり日系メーカーは部品も米国で現地生産しており、米国での雇用創出で貢献が大きいことはトランプ大統領も評価している」(経済官庁幹部)ためだ。

一方、今後の動向は予断を許さないと警戒する声も政府・与党内には依然ある。

5月に米ブルームバーグが「米は日・EUに対し関税賦課を遅らせる代わり対米輸出の『制限ないし規制』を条件に180日間の猶予を与える案を検討」と報じた直後、茂木再生相は「米国が日本に対し自動車の輸出数量制限を求めない方針であることをライトハイザー代表を通じて確認した」と説明した。

しかし複数の政府・与党関係者によると、年間7兆円の対日貿易赤字の過半を占める自動車に関し、日本からの輸出削減と米国での現地生産拡大を求める声が米側には依然あるという。ある政府関係者は「日本政府には民間企業の輸出を規制する権限はないため、どうしても米国が日本の自動車輸出を抑えたいならば、追加関税しかない」と話す。

みずほ総合研究所の菅原淳一主席研究員は「日本は232条の適応対象外だという確約が得られないと今回の合意は危ういと思っている」と指摘している。

(取材協力 金子かおり 編集:石田仁志)

ロイター
Copyright (C) 2019 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ、ロシアの攻撃で5人死亡 モルドバの送電

ワールド

ロシア、カスピ海へのイラン紛争波及を警戒=大統領府

ワールド

欧米の関係断絶、ウクライナ侵攻に匹敵 元に戻らず=

ビジネス

ユーロ圏総合PMI、3月速報は成長停滞 中東紛争で
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店員も「なすすべなし」の暴走モード
  • 2
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」モナコ舞踏会に見る富と慈善
  • 3
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」した──イスラエル首相
  • 4
    【クイズ】2年連続で「世界幸福度ランキング」で最下…
  • 5
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆…
  • 6
    「胸元を強調しすぎ...」 米セレブ、「目のやり場に…
  • 7
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ…
  • 8
    スウェーデン次期女王ヴィクトリア皇太子、陸軍訓練…
  • 9
    「買ったら高いじゃん?」アカデミー賞会場のゴミ箱…
  • 10
    イラン戦争、トランプを泥沼に引きずり込む「5つの罠…
  • 1
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 2
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え時の装いが話題――「ファッション外交」に注目
  • 3
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が発生し既に死者も、感染源は「ナイトクラブ」
  • 4
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 5
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 6
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 7
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 8
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ…
  • 9
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 10
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラ…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 10
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中