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焦点:日銀、金融政策維持へ 米中摩擦のリスクなど点検

2019年06月17日(月)12時29分

[東京 17日 ロイター] - 日銀は19、20日の金融政策決定会合で、現行の長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)付き量的・質的金融緩和政策の維持を決める見通し。5月に入って情勢が急変している米中貿易摩擦や、それに対する市場の反応などが経済に与える影響について議論を深めることになる。

米国が中国の対米輸出2000億ドル相当の関税引き上げを実施し、中国も米国の対中輸出600億ドルの関税引き上げを行うなど、5月に入り米中間の貿易摩擦が激化している。

5月景気ウオッチャー調査で景気の現状判断DIが2カ月ぶりに悪化し、センチメントを示すソフトデータの一部には米中貿易摩擦悪化の影響が出始めている。

一方、中国向け輸出や生産、設備投資などのハードデータはまだ出ていない。政策委員会の内部では、5月以降の状況を踏まえた経済指標や6月日銀短観を見極めたいとの声が多く、現時点では日銀が描く「年後半回復」のシナリオは維持される見通し。

今月8、9日に福岡で開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では「貿易と地政を巡る緊張は増大してきた」との懸念を示しながらも、世界経済について「足元で安定化の兆しを示しており、総じて今年後半、2020年に向けて緩やかに上向く見通し」との認識を共有した。

物価面も大きな変化はない。4月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く、コアCPI)は前年同月比0.9%上昇し、前月の0.8%上昇からプラス幅が拡大した。米中貿易摩擦を受けた商品市況の下落や、中東情勢を受けた原油価格の変動など不透明要因は多いものの、現時点で「物価2%に向けたモメンタム」は維持されているとみている。

こうした経済・物価情勢を背景に、日銀では、現行の強力な金融緩和政策を粘り強く続ける姿勢を確認する見通し。

世界的な長期金利の低下もあり、10年最長期国債利回りは一時マイナス0.135%まで低下した。日銀内では、プラス・マイナス0.2%程度とするレンジ内での動きであり、金融調節上は問題ないとの立場だ。

また、海外経済の先行き不確実性が高く金融システムの耐性が維持されている現状では、長期金利が一時的にマイナス0.2%を下回ったとしても障害にはならないとの声が出ている。

ただ、長期金利に象徴されるように、米国・欧州ともに市場では金融緩和を織り込む動きが顕在化してきた。

米国では、4日にパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が「景気拡大を持続させるために、適切に行動する」と述べ、市場の利下げ観測が高まった。

米国が利下げに踏み切る際には、日米金利差縮小から円高が進むとの観測が市場では根強くあり、6月18─19日に開かれる米連邦公開市場委員会(FOMC)の動向にも注目している。

(清水律子 伊藤純夫 編集:田巻一彦)

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