ニュース速報

焦点:中国で銀行初の永久債発行へ、資本強化狙うも需要弱く

2019年01月26日(土)12時29分

[シンガポール/上海 21日 ロイター] - 中国当局は先週、銀行による永久債の発行を初めて承認した。不良債権の増大に悩む銀行の資本強化に向けた大きな一歩だが、需要は弱そうだ。

先陣を切るのは同国第4位の銀行、中国銀行(BoC)<3988.HK><601988.SS>で、最大400億元(59億ドル)の発行が認められた。

他の国内銀行は中国銀行の起債動向を注視するだろう。

中国の景気は減速し、当局は銀行に体力を付けさせて融資を拡大できるようにしたいと焦っている。しかし銀行の資本は不十分なため、貸し出し余力は限られている。

中国の大半の銀行は「その他Tier1(AT1)資本」が比較的薄いが、これまでAT1資本を増やす手段は優先株の発行しかなかった。

しかし株式市場が軟調で、多くの上場銀行の株価は現在、簿価を下回って推移しているため、株式を売り出しにくい環境。銀行は低金利を利用した国内債券市場での資金調達に目を向けるようになっている。

CIBリサーチの推計では、中国の銀行はAT1資本の不足を補うため、年内に永久債か優先株の発行を通じて4700億元(692億4000万ドル)を調達する必要がある。

永久債の返済順位は通常の債券より低く、株式をわずかに上回るだけなので、投資家は高い利回りを得る必要がある。

UCONインベストメンツのグー・ウェイヨン首席投資責任者は「理論的には、永久債の保有はリスクが非常に高く、リターンは限られている。もっと良い投資の選択肢はある」と語る。

中国銀行は永久債の発行計画についてコメントを控えた。利回りについても手掛かりを示していない。

CIBの推計では、永久債の利回りは、同一銀行のTier2資本に属する債券を150ベーシスポイント(bp)上回る可能性がある。中堅の銀行だと7%前後となる計算だ。

銀行筋と機関投資家幹部らによると、中国銀行は既に需要とプライシングを見極めるため、潜在的な投資家に接触している。このうち1人によると、1月末までに起債する計画で、利回りは4.5─5.2%の範囲となりそうだ。

この関係筋は「われわれが買いたいと思うほど利回りは高くない」と述べた。

多くの機関投資家幹部は、中国銀行の永久債の投資家層は限られるとの見方を示した。ただ、政府が国有ファンドや保険会社にまとまった買いを要請することは簡単だという。

一部のファンドや資産運用会社は、永久債には魅力を感じないと述べた。また中国の保険会社は、永久債のように簡単に評価を切り下げられる条件のついた資本性証券の購入を禁じられており、当局がこの規制を緩めるかどうかは定かでない。

永久債は世界中で発行されているが、中国の銀行業界では、2008年の世界金融危機後の与信ブームを経て不良債権が積み上がっており、投資家は通常より警戒しそうだ。

公式統計によると、中国の銀行の不良債権比率は1.89%で世界金融危機以来で最も高い。しかし多くの銀行は不良債権の認定が遅かったり、隠したりするため、実際の比率ははるかに高いとの指摘もある。

(Shu Zhang記者 Samuel Shen記者)

ロイター
Copyright (C) 2019 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

焦点:闇に隠れるパイロットの精神疾患、操縦免許剥奪

ビジネス

ソフトバンクG、米デジタルインフラ投資企業「デジタ

ビジネス

ネットフリックスのワーナー買収、ハリウッドの労組が

ワールド

米、B型肝炎ワクチンの出生時接種推奨を撤回 ケネデ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 5
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 6
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開…
  • 7
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 8
    主食は「放射能」...チェルノブイリ原発事故現場の立…
  • 9
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 10
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 7
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 8
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中