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DaiGo炎上問題、「問題提起」だろうと「個人の感想」だろうと許されない意見はある
緊急事態宣言発出で人気がなくなった街で寝そべるホームレス(東京、2020年4月16) Kim Kyung-Hoon-REUTERS
<すべての人に生存権があることは正当化も否定もできない大前提の価値の1つだ。「無敵」のインフルエンサーが世論に迎合してそれに異を唱えれば、待っているのはディストピアだ>
8月7日、タレントで「メンタリスト」のDaiGoが、生活保護受給者や、いわゆる「ホームレス」の生の価値を軽んじる趣旨の動画をYouTubeに投稿し、大問題になった。若年層に影響力があるとされるチャンネル登録者数200万以上の配信者が優生思想的・差別的なメッセージを発することは、ヘイトクライムなどを誘発する危険性も考えられ、看過できない。
反人権的な俗情に訴える
「自助努力」で生きることができない「生活保護受給者」や、「汚くて怖いホームレス」を排除したい、という思考は、「素朴な感情」として世間に存在している。社会の側は、そうした思考は間違っているというメッセージを常に発信し続ける必要がある。それが足りない場合、悲惨な事件につながる。2020年には1月に東京の上野公園で、3月に岐阜県で、11月には東京の渋谷で「ホームレス」が襲撃され、死亡するに至っている。支援団体がDaiGo発言を問題視するのは、こうした背景もひとつにある。
批判が集まった当初、DaiGoは、動画の削除を行いつつも、発言自体を撤回せず、逆に自分を非難する者はホームレス支援のために増税されてもいいのか、などの挑発的な発言を続けた。のちに「言い過ぎた」ことについては謝罪したが、あくまで「個人の感想」として述べたものにすぎないとして、「問題提起」をしたいという立場をとった。しかし、社会的弱者の生存権を否定する思想を全世界に向けて開陳するのは、「個人の感想」ではすまされない。それに対して批判が集中するのは正常な反応だろう。
人権はフラットなコンテンツではない
「個人の感想」ということばで連想する人物は、「5ちゃんねる」の原型であるネット掲示板「2ちゃんねる」創設者ひろゆきだろう。ひろゆきも現在、配信者として多くのリスナーを集めており、若年層に人気があるといわれている。ひろゆきと切り離すことができないキーワードに「論破」があるが、その「ディベート」力を評価され、メディア出演も多い。
ひろゆきやDaiGoに共通する問題がある。それは人権問題を含むあらゆるトピックを「ディベート」の俎上にあげて、全てフラットにコンテンツ化してしまうということだ。人権はコンテンツではない。ある人間に生存権があるということが「論破」されたら、その人間の生存権を奪ってよくなるわけではない。
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