要するに、株を安く買い、高く売って儲けるのと同じ原理であるが、それが可能になるには電気を売ったり買ったりする市場がなければならない。中国では発電所と送配電会社とが分離されており、その間で電気が売り買いされている。但し、これまでは、そこでの取引は中長期契約が中心であり、昼間の電気を買って水を汲み上げ、夜間に発電して売るといった取り引きには適さない。だが、近年電気の短期的な売り買いを行う場である「電力スポット市場」が14の地域で試験的に開設されたことにより、蓄電がビジネスとして成り立つ環境が整いつつある。山東省では電力需要者は電気の9割を中長期契約で、1割をスポット市場で購入するというモデルが推進されているという(史丹編、2022;『21世紀経済報道』2022年4月14日)。

そうした状況を踏まえ、昨年(2021年)、中国政府は揚水蓄電の価格の決め方に関する新たな方法を定めた。電力スポット市場が存在する地域では、揚水蓄電会社はスポット市場での電力価格によって電力を購入したり販売したりすると定められた。電力を作り出すのに石炭や天然ガスを燃やさなければならない火力発電所と違って、風力発電や太陽光発電は追加的な電力を生み出すのに燃料も人手も必要としないので、電力が余っている時には極端に安い価格で売っても捨てるよりはましということになる。従って、電力スポット市場に電気を売りに出すのは主に風力発電所や太陽光発電所だと予想され、買うのは揚水蓄電会社などの蓄電企業であろう。こうして市場を通じて、自然由来の電力の不安定性が揚水蓄電会社によって平準化されると期待されるが、実際にうまく行くかどうかは実践してみないとわからない。

一方、電力スポット市場が存在しない地域では、揚水蓄電会社は水の汲み上げに必要な電気を石炭火力発電による電気の基準価格の75%で送配電会社から購入し、揚水蓄電会社が電気を売る時は石炭火力発電の基準価格と同じ価格で送配電会社に売ると定められた。揚水蓄電会社は必ず一定の利ザヤを稼げるようにはなっているが、この仕組みだと揚水蓄電がどれだけ稼働するかは送配電会社によって決められてしまうと思われる。また、中国政府が定めた揚水蓄電の価格にはもう一つの部分がある。揚水蓄電は電力系統全体の周波数や出力の安定、停電時の緊急対応など、電力系統の安定性向上に貢献するので、その貢献に対する報酬を一定の計算式に従って送配電会社から受け取り、送配電会社は電力ユーザーから徴収する送配電価格によって揚水蓄電会社に与えた報酬を回収するという仕組が作られた。

立ち遅れた日本の自然エネルギー利用