中国がデータ量の豊富さを武器にAIで急成長をみせる一方、日本ではデータが足りなかったり、あっても使えなかったりすることがAIの発展を妨げる可能性が高い。たしかに、我々の生活の中にも、例えば空港で出入国時にパスポートと顔を照合する作業を機械が行うようになったり、コンサート・チケットの本人確認のために顔認証が行われたりと、AIがいろいろな分野に応用され始めている。だが、日本ではデータの作成にやたらに協力させられるが、データの恩恵はさっぱり感じられないということがある。

何の話をしているのかという、マイナンバーのことである。マイナンバーは2016年に導入され、それ以来、私はいろいろな会社や機関からマイナンバーの届け出を求められ、マイナンバー通知書と身分証のコピーをこれまで何十通も発送してきた。

マイナンバーの本質は納税者番号であって、これがあれば税務署で国民一人一人の所得と納税にかかわる情報を集める作業がだいぶ軽減される、ということは理解できる。だが、マイナンバーをせっせと届け出る国民にとってはこれまでのところまったくメリットがない。

中国のデータを利用する手も

総務省はマイナンバーカードを持てば、写真付き身分証として使え、住民票も簡単にとれるようになって便利だよというが、導入から3年経っても国民への普及率が14%に届かない低迷ぶりである。しびれを切らした政府は2019年度中にすべての公務員がマイナンバーカードを取得することを義務づけるようだが、国民が不要だと思っているものを押し付けても、活用されることはないだろう。

日本国内でデータがなかなか生成されないのであれば、いっそ中国のデータを日本のAIのエサとして活用することを考えたらいいのではないか。中国人の消費行動に関するデータは中国市場でビジネスを行う企業にしか役に立たないかもしれないが、例えば医療診断のデータなんかは日本でも役に立つ可能性がある。

データはもろもろの生産要素のなかでも国際間の移転のコストが最も低い。であるならば、中国のデータを日本の企業が購入してAIに与えることも低コストで可能なはずである。データを国際間で取引することに対しては中国政府は消極的だし、日本国内でも中国のネット企業の日本進出に対して「データが漏洩する」といった反発がある。しかし、むしろデータの国際間取引のルールを定めて積極的に取引したほうが、各国のAI企業がより公平な基盤に立って競争できる。

AIが偏見を助長することも