<W杯で盛り上がる中、モスクワで開かれた国際サイバーセキュリティ会議で、プーチンが「デジタル・フリーダム」を語った>
ロシアのウラジミール・プーチン大統領は遅刻魔として有名である。2016年12月、日本の安倍晋三首相との会談には2時間40分遅刻し、2014年10月のドイツのアンゲラ・メルケル首相との会談には4時間遅刻した。
国際サイバーセキュリティ会議の会場にぎっしり詰めかけた我々は、所在なく25分間待たされた。突然、スタッフが慌ただしく動き始めたと思ったら、プーチン大統領が舞台袖から早足で現れ、壇上のパネリストたちひとりひとりと握手した後、演題に立ち、原稿を読み始めた。「ここモスクワで、サッカー・ファンだけでなく、皆さんも、国際サイバーセキュリティ会議の参加者の皆さんも歓迎したいと思います。」
ロシアで開催されているワールドカップ・サッカーでは、参加32カ国中、世界ランキングが最も低かったロシア・チームは、ベスト8進出という快挙を見せ、翌々日にクロアチアとの準々決勝を控えていた。
各国で開かれる大規模サイバーセキュリティ会議
2018年7月5日と6日にモスクワで開かれた国際サイバーセキュリティ会議は、ロシアにとって初めてとなる大規模なサイバーセキュリティ会議だった。

世界各国でこうしたサイバーセキュリティないしサイバースペースに関する会議が開かれるようになっている。イスラエルのサイバーウィーク、シンガポールの国際サイバーウィーク、エストニアのサイコン(CyCon)、中国の世界インターネット大会(烏鎮会議)、各国で巡回して行われているサイバースペース会議(ロンドン・プロセス)などが知られている。
ロシアの国際サイバーセキュリティ会議を主催したのは、ロシア最大の商業銀行といわれるズベルバンク(SBERBANK)である。ズベルバンクはもともと国立の銀行だったこともあり、プーチン政権とは密接な関係にある。国際サイバーセキュリティ会議には2300人の登録者があったという。
会議招待時点でプーチン大統領が最終セッションで司会をすると予告されていたが、プログラムには掲載されていなかった。会議開催前日に主催者からプログラム変更がアナウンスされ、プーチン大統領は午後一番に来て基調講演をするということになった。ズベルバンクとの密接な関係をうかがわせる。
ズベルバンクがこの会議をスポンサーすることにしたのは、ロシアでは銀行がサイバー犯罪の最大のターゲットになっているからだという。
しかし、会議を実質的に仕切っていたのはバイ・ゾーン(BI.ZONE)というサイバーセキュリティ会社である。若きCEOのドミトリー・サマルツェフによれば、同社は2014年のソチ冬季オリンピックを担当し、機能停止は一度もなかったという。