日本では、非正規社員と正社員の待遇格差、男女間の賃金・昇進格差、劣悪な子育て環境や長時間残業、教育制度の不備やIT化の遅れ、重層的な下請け構造と中小企業の劣悪な経営環境の是正、効率の悪い流通システムの改善など、数え切れないほどのミクロ的課題が指摘されてきた。だが、こうした指摘は、一時的に社会の注目を集めることはあっても、その後、社会は関心を失ってしまい、どれも十分に解決したとは言い難い状況にある。

一連の問題を放置したまま、経済を最適化することは不可能であり、マクロ政策が十分に機能しないという形で社会に実害をもたらす。アベノミクスのスタート直前も、多くの専門家からミクロ的な課題解決を伴わなければ量的緩和策は効果を発揮しないという指摘があったものの、「これしかない!」といった大きな声にかき消され、顧みられることはなかった。

今、発生している物価上昇や円安はまさに構造的な要因であり、単純なマクロ経済政策だけでは到底、太刀打ちできない。今こそ、初心に立ち返った地道な政策努力が必要である。

【関連記事】
ニューズウィーク日本版 進化する世界の鉄道
2026年10月20日号(10月14日発売)は「進化する世界の鉄道」特集。

鉄道黄金期を迎えたヨーロッパを旅する――コリン・ジョイス(ジャーナリスト)/豪快かつ特異なアメリカ大陸鉄道史/膨張する中国鉄路の野望/「夢の超特急」リニアの現実/韓国、アフリカ、インド……世界を駆ける鉄道新事情

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら
※画像をクリックするとアマゾンに飛びます