もし今回と同様、価格への転嫁が実施されなかった場合、企業は減益や賃下げに追い込まれる可能性が高くなる。このシナリオどおりだとすると、全世界的に進むインフレに対して日本だけが特殊な動きを見せ、諸外国ほどには物価が上昇しないかもしれない。

企業が輸入価格の上昇を製品に転嫁しないということは、国民全員が貧しくなることとほぼイコールである。日本経済は慢性的な低賃金が続く一方、輸入品の価格は上昇するので、輸入依存度が高い製品の値段は上がっていくことになる。一般的にインフレが発生すると、賃金が上がってもさらに物価が上がるという悪循環となり、消費者にとっては困った事態といえる。

だが、製品価格に転嫁するということは、賃上げの原資を企業が捻出するということでもある。企業が製品価格への転嫁を諦めたということは、賃下げを意味しており、国民生活にとって良いことであるとは到底言えない。企業の利益も下がるので、株価も下がりやすくなり、公的年金の運用などにも影響が及ぶ可能性がある。

【関連記事】
ニューズウィーク日本版 ベトナム化するイラン戦争
2026年9月1日号(8月25日発売)は「ベトナム化するイラン戦争」特集。

曖昧すぎる目標、敵国の軽視、自国軍事力への過信……長期化・泥沼化したベトナム戦争との共通点

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら
※画像をクリックするとアマゾンに飛びます