<主人公の女性国務長官と大統領の関係は、新任当時のオバマとヒラリーを想像させる>

元大統領のビル・クリントンが、ギネスブックに出てくるほど多くのヒット作を出している作家のジェイムズ・パタースンと組んで書いた『The President is Missing』という政治スリラーを刊行したのは3年前のことだ。この作品は大ベストセラーになり、このペアは今年ふたたび『The President's Daughter』という政治スリラーを出した。それに対抗するように、ヒラリー・クリントンも最近になって政治スリラー『State of Terror』を刊行した。

ヒラリーが共著者として選んだのはルイーズ・ペニーだ。ペニーは、ケベック州の小さな村であるスリー・パインズ村の「ガマシュ警部」を主人公としたシリーズで有名なベストセラー作家である。スリー・パインズ村のシリーズは新刊が出るたびに全米でNo.1のベストセラーになるほど情熱的なファンが多い。ビルの共著ペアとの違いは、ヒラリーとルイーズがずっと前から友人だったというところだ。読んでみると、この違いが内容にも影響を与えていると感じられる。

『State of Terror』の主人公は、新しく就任したばかりの女性国務長官エレン・アダムズだ。オバマ大統領が政敵であったヒラリーを国務長官に選んだように、新任の大統領ダグ・ウィリアムズは自分のライバルを支持して自分へのアンチ・キャンペーンを繰り広げた政敵のエレンを国務長官に選んで世間を驚かせた。メディアは、その理由は政敵やライバルを集めたリンカーン大統領にならったか、あるいは孫武の兵法にあるように「友を近くに置け。敵はさらに近くに置け」ではないかと分析したが、エレンはそのどちらも違うと知っている。

謎の国際テロ事件

新任の国務長官は海外を飛び回ることになるので、大統領は敵をホワイトハウスから遠ざけておくことができる。ウィリアムズ大統領の前任であるダン前大統領が国際関係を徹底的に破壊させたため、アメリカの信頼は地に落ちていた。それを回復させるのは容易なことではない。エレンが大失敗するのは時間の問題なので、彼女の信用が地に落ちてから首にするというシナリオだった。

ウィリアムズ新大統領が予期していなかったのは、任期が始まってすぐに起こった国際テロ事件だった。最初はロンドンでバスが爆破され、次はパリで同じことが起こった。これまでのテロと異なるのは、テロを犯したグループが名乗り出ないことだった。ロンドンのバスの爆破で死にかけたジャーナリストの息子に疑いをかけられたエレンは、これまでとは異なる集団の異なる目的を察知して危険な国々のトップに会いにでかける。信用できないのは、イランやロシアの指導者だけではない。アメリカの前大統領とその支持者、そして、現在の閣僚やホワイトハウスで働く者たちの中にも裏切り者がいるようだ。エレンは補佐として雇用した幼稚園時代からの親友のベッツィーを頼りにテロの首謀者と裏切り者を突き止め、アメリカ国内での爆弾テロを防ごうとする......。

実在の人物を連想させる登場人物
【関連記事】