<印象的で不思議な写真を撮る、2015年世界報道写真コンテスト受賞者のバングラデシュの写真家サルカー・プロティク。尋ねてみると、彼の宗教的アイデンティティは風変わりなものだった>
バングラデシュの写真家サルカー・プロティクは不思議な写真家だ。人を迷わせてくれる。
最初に強烈な印象を受けたのは、彼が2015年にワールド・プレス・フォト(世界報道写真コンテスト)の日常生活部門を受賞した作品だ。年老いて衰弱した彼の祖父母に絡みつく"日常"をドキュメントした「What Remains」。意図的に露出過多にしていて、白っぽさの感覚を重視したカラー作品である。
【参考記事】世界報道写真入賞作「ささやくクジラたち」を撮った人類学者
それを見て私は、天井の高い教会、その窓から差し込む光の中で祈っている人々、あるいは多くのキリスト教徒が持っているであろう死のイメージが、なぜか脳裏の中で重なり合った。その感覚的かつ視覚的な交錯が、はかなく、美しく、同時に壮厳さを与えてくれた。
混乱した。なぜなら、バングラデシュ人の圧倒的大多数はイスラム教徒だからだ。
だが、プロティクの新しい作品はさらに混乱させる。極めて仏教的なのである。彼がシグナチャー(スタイル)として自負するオーバー・エクスポージャーが多用されているため見落としがちだが、日本やチベットなど大乗仏教の地の伝統文化に見られる、光の陰と陽をシンプルに強調した陰影の礼讃、あるいは禅の中に存在する宇宙的的思考を孕んでいたからだ。