[ロンドン 5日 ロイター] - 英国が国民投票で欧州連合(EU)離脱を決めたのを機に、他のEU諸国は英国から金融ビジネスを奪おうと目を光らせ始めた。中でもユーロ建て証券の清算(クリアリング)事業は、今後の離脱交渉で焦点となってきそうだ。
英国とEUとの離脱交渉では、金融機関がEU全体でサービスを提供できる「パスポート」権、自由な人の移動、単一市場へのアクセスの3つがキーワードとなる。
これらの交渉に失敗すれば、世界の金融センターとしての英金融街シティの存在感は縮小し、英国は大きな税収減を他国に奪われかねない。
シティの有力者によると、昔ながらの「領土争奪戦」が始まる気配だ。
清算機関LCH・クリアネット・LSEを所有するロンドン証券取引所グループのドナルド・ブライドン会長は「英国から素早くお株を奪おうとする動きが既に見られる」言う。
LCH・クリアネットはコメントを避けた。
フランスのオランド大統領は英国民投票の直後、ユーロ建て証券はロンドンではなくユーロ圏で清算すべきだと述べた。
欧州中央銀行(ECB)も清算機関をユーロ圏に移した方が金融安定に資するとの見方を表明している。
現在、ロンドンで清算が可能なのは、銀行や証券取引所、清算機関がEUから「パスポート」を付与されているからだ。
<移動の自由か、パスポートか>
ロンドンの銀行は単一市場から締め出されることを恐れ、英国のEU離脱後もパスポートを維持できるようロビー活動を展開しているが、全面的に維持できる見込みは薄い。
英HSBCのダグラス・フリント会長は「最も重要なのは、われわれには単一市場への全面的なアクセスが必要だという前提で話を始めることだ」と言う。
英バークレイズ銀行のジョン・マクファーレン会長は「何が起ころうと、われわれは乗り越えられるだろう。以前のような良い状態ではなくなるかもしれないが」と話した。
ドイツ、フランス、EU当局者らは既に、英国が単一市場への全面的アクセスを望むなら、ユーロ圏の金融規則に従うだけでなく、EU市民の英国での居住、労働を許すべきだと主張している。
EU高官らは、人、資本、モノ、サービスの自由な移動を認めない限り、それに付随する「パスポート」は機能しない、と述べた。
パスポートを失えば、ロンドンがユーロ建て証券の清算を続けるのも難しくなる可能性がある。
しかしホールセール市場ブローカー協会のデービッド・クラーク会長は、イングランド銀行(英中央銀行)とECBが金融危機の際にそれぞれの通貨を供給し合う協定を結んでいる限り、清算機関がロンドンに留まれない理由はない、と見ている。
業界筋によると、LCH・クリアネットの半身であるクリアネットは既にパリに拠点を置いているが、現在は株式の清算しか行っていない。大規模な市場であるユーロ建てスワップの清算も行うには規制上の認可が必要になる。
また、清算機関の会員金融機関がデフォルト(債務不履行)を起こした場合に備え、より多額の資金準備が必要になるため、会員に数百万ユーロのコストが発生する。
バークレイズ銀行のマクファーレン会長は「ロンドンで清算が行われているのは、その方が機能するからだ」との見方を示した。
(Huw Jones記者)