今回の政権崩壊を招いた責任は、石破首相だけではありません。麻生太郎氏も、森山裕氏も、そして菅義偉氏も同罪です。減税に反対したのがいけないのではありません。そうではなくて、野党が無責任にも言及しない「財政規律」の大切さを、骨の髄まで理解していながら、同時にそれを国民に説明してこなかったからです。
もしかしたら、石破首相も、そして麻生、森山、菅の各氏も「財政規律などという難しいことは、有権者に訴えても理解されない」と思い込んでいたのかもしれません。だとしたら、これこそが巨大な罪悪だと言えます。自分たちのコミュニケーション能力が決定的に欠けていることを棚に上げて、国民に責任を転嫁するのであれば、それは国民への敵対行為だからです。
1年前になりますが、長期政権を期待されていた岸田政権があっけなく崩壊したのも同じです。給付を行うごとに財源を探して増税をする、つまり「必死に財政規律を維持する」姿勢が「増税メガネ」として批判されたからでした。では、国民は愚かなので目先のカネを求めているだけなのかというと、それは「全く違います」。財政の悪化が深刻な問題を招くことを、国民は知っています。そうではあるのですが、多くの国民は税と社会保険料の重い負担に耐える中で、物価高に直面した現在では、対策を求める権利があると考えています。その権利主張は正当です。
国民世論は絶対の正義か?
ならば国民世論は絶対の正義であって、一過性の給付ではなく、恒久的な減税をすれば政権が安定するのかというと、それは違います。世界が不安定化する中で、今後も円安トレンドが続けば、グローバル経済における日本円のシェアは下がっていきます。今は日本と日本円は「大きすぎて潰せない」規模ですが、このままでは、いずれ、1997年の韓国やタイのように市場から見捨てられるタイミングが来ます。
そうなる前に、資産や人材の海外逃避が加速したり、厳しい円安のために今以上の物価高が襲ったりするでしょう。食糧難や慢性的な計画停電、また、それによる社会の混乱も起きる可能性があります。そうなれば、社会苦の深刻さは、現在とは別次元のものとなるでしょう。
財政破綻は今は起きないかもしれません。数年後ということもないでしょう。ですが、財政規律を維持していかないと、近い将来には現実のものとなります。そうならないために、またそのような破綻を一年でも遅らせるために、どこかに最適解があるはずです。
次期政権はいずれにしても、給付か減税で国民生活を支援するための具体策と金額の決断をする必要があります。その決断は、そこが政権にとって最適解だと判断するということです。そこが、長期的な財政規律との均衡点だと判断するということです。ならば、それを国民に説明して支持を得なくてはなりません。そのことが、つまり国民への説明と説得ができるのか、できないのか、それが今回の総裁選において、総裁を選ぶ上での最重要項目になります。
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