原因は、レバノン南部を実効支配しているヒズボラの幹部の葬儀に、縁者として参列したことを重く見て、反米的な人物という判断がされたからだと言われています。こちらの判断にもICEが関与しており、通常の運用ではあり得ない越権行為だという見方があります。また、この事件においても国外退去処分は、連邦判事の決定を無視して行われています。

このようにICEが既存の法体系を無視するかのように振る舞っているのは、合衆国憲法への深刻な挑戦だという議論が広がっています。そんな中で、連邦最高裁判所のロバーツ長官は、非常に慎重な言い回しではありますが、ハッキリと大統領を批判して話題になりました。

ロバーツ長官は「政府が司法の決定に同意できないことは想定し得る。けれども建国以来、アメリカはそうした場合に判事を罷免するという解決法を取ることは避けてきた」と、どこにも「トランプ」という名前は挙げずに、しかし、厳しく大統領を批判したのでした。

三権の長であるロバーツ長官が、司法権を代表して、同じく三権の長である行政府のトランプ大統領に、このような書簡を送るというのは非常に重たい意味を持ちます。トランプ政権は、オバマ政権の任命した判事は偏向しているので、どんどんクビにすると息巻いていますが、ロバーツ書簡はこれに強く警告を発した内容となっているからです。

景気への認識から本格的な株安を招いてしまっているトランプ政権ですが、今度は、司法権との全面対立という新たな問題を抱え込んだ格好です。

【関連記事】
株価下落、政権幹部不和......いきなり吹き始めたトランプへの逆風
施政方針演説で気を吐くトランプに、反転攻勢の契機がつかめない米民主党

ニューズウィーク日本版 台湾有事の新シナリオ
2026年4月21号(4月14日発売)は「台湾有事の新シナリオ」特集。

米・イラン戦争で変わる地域紛争の「大前提」/石油危機を恐れるべき理由

※バックナンバーが読み放題となる 定期購読はこちら
※画像をクリックするとアマゾンに飛びます