[東京 29日 ロイター] - ドル/円<JPY=EBS>は上値が重い展開が続いている。28日に発表された米連邦公開市場委員会(FOMC)の声明文はタカ派的と受け止められたが、12月米利上げが現実にあるかどうか経済指標次第との見方が多い。さらに9月鉱工業生産指数の上振れで日銀の追加緩和観測がやや後退。日米の金融政策という2つの重要材料で決め手を欠くまま、レンジ突破のきっかけをつかめずにいる。

<「ドラギ・マジック」上回れず>

FOMCの声明文は、市場で後退しつつあった12月の利上げ見通しを再浮上させる内容だった。前回9月の声明にあった世界経済をめぐるリスクが米経済に与える潜在的な影響(国際情勢)について直接言及せず、利上げ検討のタイミングとして、次回の会合(at its next meeting)という文言を入れてきた。

意外感のあったFOMC後の米株高は、銀行株が主導。金利上昇による利ザヤ改善期待を織り込む動きがみられた。実際、米金利は2年債利回り<US2YT=RR>が9ベーシスポイント上昇と、1日の上げ幅としては2月6日以来の大きさになった。

しかし、ドル/円の上値は121.26円止まり。欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁が12月の緩和強化を示唆したことで付けた121.60円にも届かなかった。29日の東京市場では120円後半に落ち込んでおり、8月下旬以降続く、118円半ばから121円半ばを中心としたレンジを突破する勢いは乏しい。

<米利上げ、年内なしの見方も>

ドル/円の重さには2つの理由がある。1つは12月米利上げへの疑念だ。米連邦準備理事会(FRB)は、今回の声明文で年内利上げの可能性を残したものの「FRBがドラギ総裁に先手を打たれた、という捉え方もある」(国内金融機関の為替ディーラー)という。

ECBが緩和マネー供給を継続させれば、FRBも出口に向かいやすいとの見方もできるが、ドラギ発言によって、対ユーロでドルがすでに上昇している。米利上げでさらにドル高が進むと、米経済にダメージを与えかねない。

FRBが14日公表した地区連銀経済報告(ベージュ・ブック)では、製造業部門がこのところのドル高によって痛手を受けているとの認識が示された。市場では「ユーロ売りになると相対的にドル高になる。製造業に対するドル高懸念ということをテーマに考えると、利上げがやりにくくなったのではないか」(同)との見方もある。

実際、一見タカ派にみえる今回の声明文は「経済指標次第」という利上げの条件を巧みに散りばめてある。

「目標誘導レンジを次回の会合で引き上げることが適切かどうかを決めるに当たって、委員会は最大雇用とインフレ率2%の目標に向けた進展について、実績と予測の両方を評価する。この評価は、労働市場の状況に関する指標、インフレ圧力やインフレ期待の指標、金融動向や国際情勢の解釈を含む幅広い情報を考慮する」──といった具合だ。

フェデラルファンド(FF)先物は、12月利上げに踏み切ると市場関係者らが予想する確率が、FOMC声明発表前の34%から47%上昇したが、依然5割以下。

マネックス証券のシニア・ストラテジスト、山本雅文氏は「実際に利上げに乗り出せるかどうかは経済指標次第という状況に変化はない。雇用や小売、耐久財などが弱く物価基調が弱まれば、利上げしない可能性はなお残っている」とみる。

<明日の日銀緩和、織り込みは限定的>

ドル/円上昇の勢いを削ぐもう1つの要因が、日銀追加緩和期待の後退だ。

29日に発表された9月鉱工業生産指数は、前月比0.5%低下の市場予想に反し、1.0%上昇とプラス。追加緩和期待の後退で、場中では日経平均株価<.N225>はマイナス圏に沈み、ドル/円の上値を押さえた。

日銀が30日の金融政策決定会合で、展望リポートの成長率や消費者物価見通しを下方修正し、追加緩和に動くとみる向きも依然多いが、実際のトレードデータとしては、日銀の追加緩和期待が高まっていないことを示す結果もある。

金融政策の先行きを占うユーロ円3カ月物金利先物は、ドラギ発言後の高値を抜けていない。足元、上昇力が低下し、出来高も盛り上がりに欠けることを踏まえれば、現時点で年内の日銀追加緩和観測が後退していると捉えられる。

30日の日銀会合を過ぎれば、ドル/円の方向性を決める次の「天王山」は12月となりそうだ。3日のECB理事会を皮切りに、4日に11月分の米雇用統計、15─16日にFOMC、17─18日に日銀決定会合と横綱級のイベントが相次ぐ。

日米欧の金融政策をめぐる不透明感は、しばらく消えそうになく、ドル/円がレンジを抜け出すかどうか、不透明感が一段と増している。

(杉山健太郎 編集:伊賀大記)

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