マスクにとってテスラの現在の優先事項が何であるかも、同じくらい分かりやすい。
EV分野でかつての圧倒的な市場シェアと収益を失いつつあるなか、マスクは電動ピックアップの「サイバートラック」にのめり込んでいるが、投資はほとんど回収できていない。CEOである自身の560億ドルの報酬パッケージは、一時裁判所に無効と判断された。
5月初めにはスーパーチャージャー部門の数百人をほぼ全て解雇した(その約1週間後に、事業拡大に資金を投じる意向をXで表明した)。
マスクはテスラをもはや「自動車会社」とは考えておらず、自動運転とAI(人工知能)技術のための手段であると公言しているが、テスラの運転支援機能「フルセルフドライビング」は悲劇的な失敗を重ねている。
マスクの頭の中で、気候変動は完全に後回しになった。最近は、性器のかゆみについてジョークを飛ばすAIチャットボットの開発のために数十億ドルを調達し、優生主義的なプロナタリズム(出産奨励主義)を支持して、移民や企業のダイバーシティをめぐる人種差別的な陰謀論の擁護に忙しそうだ。従って、トランプが石油業界の重役に明確な見返りを約束し、EVの販売を全面的に禁止すると脅して政権を奪還した暁には、あらゆる種類のグリーンテック優遇措置を撤廃するつもりであることも、今のマスクはほとんど気にしていない。
自分に現在の名声と力をもたらした気候変動のアジェンダも、もはやどうでもいいのだろう。
2026年7月21日号(7月14日発売)は「最強AIを生んだ アンソロピックの衝撃」特集。
ペンタゴンが狙う世界最強AIクロード・ミュトス。「生みの親」アンソロピックは人類の守護者か、破壊者か
※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら
※画像をクリックするとアマゾンに飛びます