広く知られているように、中国の習近平(シー・チンピン)国家主席は軍幹部の驚くべき大粛清を進めている。だが中国共産党内部のもう1つの粛清については、それほど注目されていない。習による容赦ない排撃の標的になっているのは、党の最高意思決定機関である政治局常務委員会の元メンバーで「経済皇帝」と呼ばれた王岐山(ワン・チーシャン)だ。
王は具体的な容疑に問われているわけではないものの、首都・北京で事実上の自宅軟禁下に置かれている。政府系メディアに名前が登場することも、2023年10月以来、途絶えている。
同様に重視すべき事実はおそらく、王が長い党歴を通じて築き上げた人脈を、習が組織的に排除していることだ。6月2日には、王の元個人秘書で、中国証券監督管理委員会の重職に就いていた黎暁宏(リー・シアオホン)が、重大な規律・法律違反の疑いで調査の対象になっていると発表された。
習にとって、王は最も頼りになる党重鎮の1人で、反腐敗運動の指揮を任せた相手でもある。そんな人物に狙いを定めたのは、来年に予定される第21回党大会を見据えた決断だろう。王をはじめとする党の長老が最高指導者としての異例の4期目入りを阻む事態を、習は阻止しようとしている可能性が高い。
中国ではこれまで、政界を引退した党長老らが最高指導部の人選に巨大な影響力を振るってきた。1989年の天安門事件後、保守派の長老だった陳雲(チェン・ユン)元副首相の後押しで、江沢民(チアン・ツォーミン)が最高指導者に抜擢されたのがいい例だ。