「本」という商材にこだわらずに、柔軟に業態を変更させていった結果である。「本」だけに注目すると、このようなブックオフの姿は見えてこない。

また、ブックオフの柔軟性というか、圧のなさはその店舗空間にも現れていて、ブックオフはオススメ本のレコメンドをほとんどしていない。そこには、ほとんど圧がないのだ。私の2冊目の著書『ブックオフから考える』では、そうした「圧のない」ブックオフの空間をレポートした。

ヴィレヴァンは「押し付けがましさ」を乗り越えられるか

一方で、ヴィレヴァンも業態の拡大に乗り出したことはあった。2007年に雑貨店「チチカカ」を買収したのだ。チチカカは中南米の雑貨などを扱う店だったが、それらはやはりどこか中央線沿線的な匂いを色濃くもった店で、それまでのヴィレヴァンの世界観の延長にあるような店だったと思う。結局この買収は、大きな損失をもたらしただけだった。

『ドンキにはなぜペンギンがいるのか 』(集英社新書)

むしろ、「押し付けがましさ」こそが、同社が人を惹きつけてきた理由だった。

とはいえ、ここまでの大きな企業になった以上は、なんとか時代に受け入れられるような店舗空間の改革が必要にはなってくる。しかし、そうして「押し付けがましさ」をなくしていくと、今度はヴィレヴァンらしさが失われてくる。ここに、本当の意味での「ジレンマ」がある。

ヴィレヴァンの前途は、なかなか多難かもしれない。

谷頭和希(たにがしら・かずき)

チェーンストア研究家・ライター。1997年生まれ。早稲田大学文化構想学部卒業、早稲田大学教育学術院国語教育専攻修士課程修了。「ゲンロン 佐々木敦 批評再生塾 第三期」に参加し宇川直宏賞を受賞。著作に『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』 (集英社新書)、『ブックオフから考える 「なんとなく」から生まれた文化のインフラ』(青弓社)がある。テレビ・動画出演は『ABEMA Prime』『めざまし8』など。

※当記事は「東洋経済オンライン」からの転載記事です。元記事はこちら
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もちろん、ヴィレヴァンという店自体が、創業者の菊地が、自分自身の好きなものをなんでも店頭に並べ、それをオススメする形で始まったということを考えれば、そこに、ある種の押し付けがましさが生まれてしまうことは必然的なことだといえる。
しかし、こうした意見は、実情を反映できていない。というのも、まさに、ブックオフはある種の「押し付けがましさ」をもたず、柔軟にその業態や扱う商品を変えてしぶとく生き残っているからである。
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