そこで石炭などの燃料で火力を補うことになりコストが上昇した。低温で処理すればごみは生焼けになり、煙やガスの発生が増加した。

動力を得るにも、ごみを燃やしてエネルギーに変換するより単に木や石炭を燃やしたほうが安上がりだった。

そういうわけで、19世紀末から20世紀初頭に建設された焼却炉の60%が、1910年までに廃炉になるか解体された。

その後チリのアタカマ砂漠で捨てられた衣類が山となり、太平洋でプラスチックごみが巨大な渦を作るなどごみ問題の危機的状況が顕著になるなか、WTEは投棄に代わる持続可能な選択肢としてたびたび持ち上げられた。

だがWTEは決定的な解決策ではなく、医療に例えるなら対症療法だ。

スイスを例に取ろう。スイスは埋め立てを廃止したが、人口1人当たりの固形ごみ、特にリサイクルせずに焼却するプラスチックごみは増え続けている。

ごみの処理は基本的に数百年前から変わっていない。私たちは捨てることを前提としてものを生産することに、膨大な知識と時間と資金をつぎ込んできた。

「ごみ」の概念を完全になくす取り組みにそうしたリソースを振り向けたなら、これからの100年はどんなに変わるだろう。

既に私たちは捨てられるはずの牛乳から衣類を、きのこの菌糸から家具を、海藻やスイカの皮からプラスチックを作っている。

解決策を求めるなら、問題を生み出したのと同じ発想に頼っていてはいけない。廃棄物の処理方法だけでなく、もの作りの発想を根本から変えなければならない。

©Project Syndicate

231226P16_P16_01.jpgサラ・ニューマン

SARAH NEWMAN

考古人類学者。シカゴ大学助教。人類学や考古学、歴史学、美術史学の手法を用いて廃棄物と再利用の歴史、景観の変化、人間と動物の関係などを研究している。主なフィールドはラテンアメリカの古代文明。
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