「まずは完全で検証可能かつ不可逆的な非核化を実現する。それまでは朝鮮戦争の正式な終結宣言など論外だ。下院アジア太平洋小委員会の委員長として、私はこの法案を絶対に葬る」。キムはそう断言した。

だが、HR1369を提出した民主党のブラッド・シャーマン下院議員は、この「完全で検証可能かつ不可逆的な非核化」(英語の頭文字を連ねてCVIDと呼ぶ)に懐疑的で、「世界をより安全にするという点では失敗」だったと指摘する。

「安全になったのは、この言葉を口にする政治家や官僚の周辺だけだ」と、彼は言う。「CVIDを連呼してさえいれば誰にも批判されない。その間にも北朝鮮は着々と技術や兵器の開発を進めているのだが」

それでも金正恩に手を差し伸べるのはなぜか。「自分の敵と話をしなければ何も始まらない。いま一番に話すべき相手は彼らだ」とシャーマンは言い、その際は相手の立場を理解してやる必要があると続けた。

「こちらから見れば、こちらは善人。だが平壌から見れば、こちらは危険な存在であり、身を守るためには核兵器が必要ということになる」

そうであれば、北朝鮮が核兵器を完全に放棄するとは考えにくい。核武装を断念した途端にアメリカの軍事介入を招いたイラクやリビアの例を見ているからだ。

ウクライナは独立時に安全保障と引き換えに旧ソ連製の核兵器を放棄したが、結果としてロシアの軍事侵攻を許してしまった。ただし北朝鮮の核開発に対する監視は必要だと、シャーマンは言う。保有する核弾頭数の制限はもちろん、核兵器が第三者の手に渡るのを防ぐ対策も欠かせない。

もちろん「アメリカが平和協定の交渉を望むと宣言しても、それが協定の締結につながる保証はない。平和協定が非核化への大きな一歩になる保証もない」が、費用対効果を考えれば、それがベストな選択だとシャーマンは考える。

「これならアメリカ人の命を危険にさらすことはない。経済制裁を通じた北朝鮮への圧力を減らす必要もない」

不安定な「休戦」状態を正式な「終戦」へ転換するのは「正しい方向への一歩」だと、シャーマンは確信する。「なにしろ相手は、もうすぐロサンゼルスに核ミサイルを撃ち込めるようになる。だからこそ、これ(平和条約)が大事なんだ」

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