<大地を水浸しにしてクリミア半島を渇水に追い込む、暴挙の目的は反転攻勢の阻止か、「焦土作戦」か。読みきれない意図について>

ウクライナ南部にあるカホフカ水力発電所の巨大ダムが、6月6日に爆破された。アナリストからは、なぜロシアが(これがロシアの仕業だとすればだが)クリミア半島に破壊的な打撃をもたらしかねない行動を取るのかと、疑問の声が上がっている。

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、「ロシア帝国」を築くという野望達成の礎だったクリミアに見切りをつけたのか。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領をはじめとする面々はこの可能性を指摘しているが、それとは異なる見方もある。

米ジョージタウン大学の経済学者アンダース・オスルントは今回のダム爆破を、イラク大統領だったサダム・フセインによる油井破壊になぞらえる。

フセインは湾岸戦争中の1991年、クウェートからの撤退を余儀なくされたイラク軍にクウェートの油井への放火を指示したといわれる。

今回のダム破壊は「失ってしまうことが明らかな領土を破壊しようという考え方」だと、ロシアとウクライナの両政府で経済顧問を務めた経験を持つオスルントは解説する。「諦めがもとになっている行動だと思う。攻撃というよりは負け惜しみだ」

さらにオスルントは、カホフカ・ダムは重要な運河に水を供給しており、クリミア半島を維持する上で大きな役割を果たしていると指摘する。

「クリミア半島に必要な水の85%を供給する北クリミア運河は、カホフカ・ダムから取水している。このダムがなくなったら、クリミアはいずれもたなくなる」

水の供給に重大な影響

オスルントは、このダムの爆破はクリミアの農業を破壊しかねないとも語る。北クリミア運河の水の大半は農業や工業に使われ、飲料水に回るのは約2割だ。

クリミア半島は2014年、プーチンによって一方的にロシアに併合された。昨年2月から続くロシアの侵攻に対して、ウクライナが反撃の勢いを得るようになると、ゼレンスキーは停戦条件の一部として「クリミア半島はウクライナの領土と認識されるべきだ」と口にするようになった。

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