だが、今は沖縄でも、南西諸島における中国の軍事的プレゼンスに対する懸念が広がっている。読売新聞の最近の世論調査では、中国の動向を大きな脅威だと感じていると答えた人が沖縄でも非常に多かった。これは、沖縄の歴史や地位をめぐる複雑な問題に加わった新たな側面だ。

一時は沖縄でも、中国との貿易や観光の拡大に期待が高まったが、今は違う。それでも、玉城デニー知事が指摘するように、アメリカの中距離弾道ミサイルを沖縄に配備する案(米政府は前向きだ)には反対する声が大きい。中国は脅威だが、だからといって沖縄駐留米軍を増強するべきだとは思えないのだ。

アメリカと日本の戦略目標における沖縄の重要性は誰にも否定できない。だが、第2次大戦中に日本の本土で唯一地上戦の舞台となったように、沖縄はその地理ゆえに大変な苦難を強いられてきた。

沖縄戦では十数万人が命を落とし、アメリカの占領後は数万人が収容所に収容された。安全と生活のために移住を余儀なくされた人も多かった。環境も破壊され、飛行場をはじめとする米軍基地を建設するため、私有地や農地は強制的に収用された。

こうした歴史を無視すれば、新たな武力衝突に巻き込まれる可能性など想像もしたくない沖縄住民の心情は理解できないだろう。長い年月を経た今も、沖縄には第2次大戦の爪痕がまだ生々しく残っている。

台湾有事の議論やアジアの軍拡競争は、新たな戦争の不安を高めている。また、ロシアのウクライナ侵攻は、戦闘に巻き込まれた市民を待つ残忍な運命を思い起こさせた。

日米同盟における沖縄の戦略的価値や、日本の国防を強化する必要性が多々主張されるなか、沖縄の人々をどう守るかという議論は聞かれない。再び自分たちが国家の対立の矢面に立たされるのではないかと、沖縄の人々が不安を抑えられないのは、こうした沈黙のせいなのだ。

magSR20220624victimofgeography-2.jpgシーラ・スミス(米外交問題評議会上級研究員)
日本政治・外交の研究者。コロンビア大学卒。慶応大学客員研究員などを経て現職。1998年には琉球大学研究員として沖縄に住み、米軍基地問題を研究した。
もっとも交渉進展の背景にあったのは反戦運動の高まりだけではない。当時アメリカは世界戦略を練り直し始めていた。ベトナム戦争はアメリカ社会をも引き裂き、米財政を圧迫。ニクソン政権は東西冷戦における自国の役割の見直しを迫られたのだ。

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