米南西部の大手農業資本のニーズ
まず、供給側の要因。不法移民流入の最新の波は10年頃から始まった。この時期は、中米諸国(特にグアテマラ、ホンジュラス、ベネズエラ)の政治と経済が崩壊した時期と合致する。これらの国々が厳しい状況に陥った背景には、まっとうな法の支配とある程度の労働者保護を確立せずに新自由主義的な経済改革を推進したこと、麻薬密売組織の力が増大したこと(アメリカで違法薬物への需要が大きいことがそれを後押しした)、そして新型コロナのパンデミックの打撃があった。
一方、アメリカでは不法移民、つまり安価な労働力への需要も大きい。ここには、ある皮肉な要因も作用している。1986年に移民法の大幅改正がなされた際、共和党は、農場での働き手を確保したい米南西部の大手農業資本のニーズに応えて、不法移民を雇った雇用主に対する罰則を骨抜きにしていたのだ。
こうして、大量の不法移民がアメリカにやって来た。アメリカでは祖国の10倍近い給料を受け取れるし、麻薬密売組織に怯える必要もなく、政府も機能不全に陥っていない。しかし、不法移民の増加に比例して、英語を母語とする白人労働者階級のアメリカ人の怒りと反発が高まっていった。
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