ここで、王毅が言うところのトランプ政権が「東トルキスタン・イスラム運動のテロ組織としての認定を解除する」と発表したことに関して説明を加えたい。

2020年11月6日、当時のトランプ政権のポンペオ国務長官は「中国がウイグル弾圧の口実としている東トルキスタン・イスラム運動なる組織は10年以上前から存在していないので、東トルキスタン・イスラム運動をテロ組織認定リストから解除する」と宣言している

ブリンケンはそれに対して「アメリカは、あらゆる形のテロリズムに反対することを再確認し、中国の西部国境(=新疆ウイグル自治区)での動乱を求めない。 アフガニスタンの状況の変化は、地域の安全保障問題における米中協力の建設的かつ実用的なアプローチの重要性を改めて示している」と応じている。

テロ活動の存在の有無に関する米中主張の矛盾と攻防

上記の王毅・ブリンケン電話会談は、以下のような米中間の主張の矛盾と攻防を浮き彫りにしている。すなわち、

アメリカ:テロ組織はもうないので、中国はそれを口実にウイグル弾圧を正当化してはならない。

中国:テロ活動はまだ潜んでいるので警戒し、徹底して抑え込まなければならない。

今タリバンがアフガニスタンで勝利し、これからタリバン政権が誕生しようというときに、これまでのアメリカの主張と中国の主張が、国際世論「タリバンがテロ活動を復活させるのではないのか」を巡って複雑に交錯している。

中国の強みは経済復興によりテロ活動を抑えること

このような中、中国はあくまでも、「アフガニスタンを経済復興させなければ、必ずテロの温床を生む」として、経済支援と投資をタリバンに約束している。

そこには「一帯一路」強化につながるだけでなく、紛争の地、アフガニスタンに長い間眠り続けてきた「豊富な地下資源の開発」にまで手を伸ばそうという狙いが潜んでいる。

中国にとってタリバンのテロを抑え込むのは、ウイグル弾圧を正当化できるだけでなく、中国のさらなる経済繁栄への道をも約束してくれる「おいしい選択」なのだ。

人権と言論を弾圧する中国が、テロ活動を抑え込み、40年間続いてきたアフガン紛争で荒れ果てたアフガニスタンの経済発展を成し遂げることができるとしたら、何という皮肉であろうか。

中国にここまでの経済力をつけさせてきた日米の責任は、暗く、重い。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

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51-Acj5FPaL.jpg[執筆者]遠藤 誉

中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士

1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『裏切りと陰謀の中国共産党建党100年秘史  習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』(ビジネス社、3月22日出版)、『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』、『激突!遠藤vs田原 日中と習近平国賓』、『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』,『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。
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