「想定していなかったもう1つの感染経路があった」(吉住)

それは寮だ。ホスト業界でそれなりの家に住んでいるのは一部のカリスマや人気ホストだけであり、地方から出てきたばかりの若いホストや、まだ売れないホストはマンションなどで共同生活をする。あるホストクラブの寮は3LDKのマンションで、一部屋に2人が住み、多くのスペースは共有だ。ホストという仕事は、社会からはじかれた人々の受け皿という側面もある。

こういう家に住む若者たちにいくら「自宅待機」と言っても、通用しない。店や外ではマスクを着用していても、家の中ではマスクも外す。彼らは共に生活し、職場に向かい、また同じ家へと帰る。職場と居住空間が同じであり、生活形態はシェアハウスであり、その感染経路はむしろハイリスクとされる家庭内感染のそれに近い。

ホスト「だから」感染が広がるのではなく、彼らの生活スタイルの中にリスクがある。手塚は、その危険性にかなり早い段階から気付いていた。「自宅待機」をいくら呼び掛け教育しても、およそ快適とはいえない寮に24時間いられないホストは外に出ていく。手塚は4月末、フォーブスジャパンのコラムでこんなことを書いている。

《そして何より問題だったのが、ちょっと具合が悪くなったら一般病院に行ってしまい、「追い返された」と不安になり、保健所に電話しまくって繋がらず、更に不安になって直接保健所まで行ってしまったり......

事前に動画で、医療崩壊についてももちろん説明していた。少しでも具合が悪くなったら、行政のガイドラインに従った指示を、冷静に第三者が出来るようにチームを組んで対応を考えるという施策も組んだ。

しかし、微熱が出た従業員たちは、頭ではなく感情で動いてしまった。

理想論は通用しなかった。》

彼のアプローチはリスクをゼロか100かで考えるのではなく、より現実的な落としどころを探るというものだった。ホスト同士の濃厚接触はゼロにはならないからこそ、衛生管理の担当者を決めて定期的に寮の見回りを始めた。求めたのは、清潔にすることであり、感染対策が徹底できていないバーに行かないこと。細かいところから体調管理も徹底し、それを自らにも課した。

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一見華やかなホストクラブだが、裏方は地味だと、店長である蓮 HAJIME KIMURA FOR NEWSWEEK JAPAN

7月上旬、新宿・歌舞伎町2丁目、「Smappa! Group」が経営するホストクラブ「APiTS」のVIPルーム──。入り口にはランキング形式で額縁に入ったホストの写真が並ぶ。ナンバーワンの風早涼太は月間「指名130本」を数える。

彼らは店の「看板商品」である。裏方である店長の蓮は、看板を傷つけないよう常に気を配る。18歳でこの世界に足を踏み入れ、32歳になった今は店長として店とホストを守る立場にある。アイスティーが注がれたコップを手に、白いマスクの下からストローを通す。口の中を湿らせる程度に一口飲み、一息いれると、ぽつりとこんなことを言った。

「何が怖いって、自分が感染することよりも、自分たちがお客様に広げてしまうこと。それが一番怖いですね。店の信頼に関わりますから」

メディアが取り上げるのは「最低」ばかり
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