<史上最悪の被害をもたらしている森林火災は「温暖化否定」と「災害」の悪循環を脱却する契機にすべきだ>

オーストラリアは誤解されやすい国だ。黙示録的な様相を呈する大規模な森林火災にも、温暖化をあまりに長い間否定してきた報い、というイメージが付きまとう。しかし、未曽有の大規模火災の被害を受けて国民は悲しみに暮れており、変化の兆しも見え始めている。

国際社会からみると、オーストラリアは、温暖化を否定してはその被害に苦しむという悪循環に陥った国と映ってきた。米アトランティック誌のロビンソン・メイヤー記者は、「オーストラリアは都市や町が森林火災の噴煙にまみれているのに、これまで以上に石炭に執着している」と指摘。一度痛い思いをしたぐらいで石炭への依存を断つことは、あまり期待できそうにない。

これは国内のメディアの論調が単一化されているからだ、と批判する声もある。オーストラリアでは右寄りの報道機関が幅を利かせており、どの都市でもニューズ・コーポレーション発行の新聞が最も多くの購読者を誇る。同じニューズ傘下でもNews.com.auのようなオンラインメディアはやや進歩的だが、ストレートニュースもブログも、右寄りで政治色の強い論調は基本的に変わらない。著名ジャーナリストのテリー・マックランやティム・ブレアは連日、温暖化政策や研究報告などについて生半可な根拠のブログを投稿している。シドニーの駅に足を踏み入れれば、右派コラムニスト、アンドリュー・ボルトが「気候変動の嘘」を暴く番組の宣伝が目に飛び込んでくる。

モリソン首相の火災への対応と批判する国民

偏向報道と偏向した権力層

こうしたメディアコンテンツが提供されているのは、当然それを求める読者がいるからだと思うだろう。だが調査によればオーストラリアの一般市民の大半は温暖化を信じており、温暖化を否定するニュースをわざわざ消費しているとは考えにくい。

オーストラリアのメディア事情は特殊で、特定のメディアが政治に過度な影響力を持っている。ニューズ・コーポレーション傘下のスカイニュースは、一般市民はほとんど視聴していないのに、財界の大物や政治家が多く利用するカンタス航空の空港ラウンジではスカイニュースばかり流れている。首都キャンベラにある連邦議会議事堂で議員たちが見ているのもスカイニュースだ。権力と影響力を持つ視聴者が、この局に偏っているのだ。

このスカイニュースは、ソーシャルメディア上に幾つかの奇妙な動画を投稿している。ある動画では、極右のラジオパーソナリティーであるアラン・ジョーンズが、オーストラリアの温室効果ガス排出量について異説を展開。約2キロの米をボウルに入れ、「これが世界全体の排出量だとすれば、このうちオーストラリアの排出量はせいぜい数粒分」だと主張する。テレビ史上最も嘆かわしい2分間だ。

「ビジネス占星術師」を名乗る人物に、温暖化は嘘だと解説させる番組もあった。

高級紙が報じるエセ科学