<スカーレット・ヨハンソンとアダム・ドライバーの迫真の演技が光るバームバック監督の新作>

ノア・バームバック監督の最新作『マリッジ・ストーリー』の冒頭で、ニューヨークに住むニコール(スカーレット・ヨハンソン)とチャーリー(アダム・ドライバー)の夫婦は、相手の愛すべき点を次々と挙げる。

ニコールはプレゼント選びの天才だと、チャーリーは言う。スクリーンにはブルックリンのアパートで、チャーリーがもらったばかりのトランペットを思い切り吹いてみて、ニコールがうれしそうに笑う姿が映し出される。

8歳の息子ヘンリーと遊ぶとき、ニコールは地面にはいつくばって本気で遊ぶ。子煩悩だが、どこかマイペースなところがあるチャーリーにはできない遊び方だ。

ニコールは、チャーリーが一番好きな女優でもある。彼が舞台監督を務める現代版『エレクトラ』のリハーサルで、ニコールは主人公を演じつつ、チャーリーの演出に真剣に耳を傾け、その難しい注文に応えようとする。

2人は小さいながらも高い評価を得ている劇団の共同運営者だ。チャーリーは厳しい舞台監督である一方、キャストやスタッフにとっては面倒見のいい兄貴のような存在だ。

チャーリーは料理上手で、てきぱき家事をこなし、よき父親で、こざっぱりした着こなしができる。「一緒にいて恥ずかしくなる格好をすることはない」と、ニコールは愛情に満ちた様子で言う。「それって男性では珍しい」

やがて、この心温まる導入部は、現在の2人の気持ちとは正反対であることが明らかになる。2人は「離婚手続きを友好的にスタートさせるために」というカウンセラーの勧めで、相手と恋に落ちた理由を書き出していたのだ。

だが、ニコールはそのリストを読み上げることを拒否。夫とカウンセラーの説得に腹を立てて、部屋を出て行ってしまう。リストには夫婦が失ったもの──2人で築き上げ、ここから少しずつ壊していかなければならない家庭生活の姿が記されていた。

離婚産業に翻弄されて

バームバックは2005年の『イカとクジラ』以来、自伝的要素の強い作品を相次いで発表してきた。『イカとクジラ』は両親の離婚を子供(つまりバームバック)の視点から描いた作品だったが、『マリッジ・ストーリー』は彼と女優ジェニファー・ジェイソン・リーとの離婚を題材にしているようだ。

リーはバームバックの作品で重要な役を演じたり、原作を共同で執筆したりと、妻であると同時に、クリエーティブなパートナーでもあった。息子がいる点も、チャーリーとニコールの夫妻と同じだ。

リーが離婚のことや、その後のバームバックと女優グレタ・ガーウィグの関係について言及することはめったにない。ただ2016年に、バームバックとは息子の「共同親権者としてうまくやっている」とだけ語っている。

友好的な離婚になるはずだった