2つ目は、トランプの大型減税がアメリカの貿易赤字減らしを妨げる構造的な要因ともなっていることだ。

マクロ経済学でいう「貯蓄投資バランス」では民間部門と政府部門の貯蓄と投資の差額の合計は貿易収支に等しくなる。大型減税により今後10年間、米政府の債務残高は年に約1兆ドル膨張する見込みで、財政収支は今以上に大幅な赤字になりそうだ。必然的に対中国を含む貿易赤字も拡大することになる。

とはいえ経済が悪化すれば、輸入需要が低下し、貿易赤字のGDP比も通常は低下する。従ってアメリカの景気が冷え込めば、トランプ減税による貿易赤字の拡大にも多少は歯止めがかかる可能性がある。

さらに重要なのは、中国も2018年末から大型減税を実施していることだ。これにより中国の貿易黒字は来年には大幅に縮小し、四半期実績では赤字に転じる可能性もある。対米黒字は2020年にも解消しそうにないが、黒字幅は著しく縮小するだろう。

そうなれば、トランプも対中圧力を若干緩めるかもしれない。見方によっては、アメリカの景気後退は世界経済にとってまんざら悪い材料ではなさそうだ。

©Project Syndicate

<本誌2019年9月10日号掲載>

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