Heekyong Yang Daniel Leussink Hyunjoo Jin

[ソウル/東京 30日 ロイター] - 韓国・ソウルに住むキム・ミンソンさん(48)は今年7月、中国の電気自動車(EV)大手、比亜迪(BYD)のEVを購入した。

周りからは質問攻めにあった。

「みんな、なぜ中国車を買ったのか、死にたいのか、という反応だった」とキムさんは話す。中国車が長年、粗悪品と見なされてきた韓国では、ほんの数年前なら考えられない買い物だった。

購入した小型車「ドルフィン」 は約1万8500ドル(約290万円)と安く、装備も充実し、そして何より、すぐに納車された。キムさんは当初、現代自動車の「キャスパーEV」が欲しかったが、納車までに2年超待ちと言われた。

欧州などで急速に事業を拡大したBYDなど中国の自動車メーカーは今、強力な自動車産業を抱え、懐疑的な消費者も少なくない韓国と日本市場に照準を合わせている。韓国では浸透しつつある一方で、日本での販売は低調だ。

EV普及度の違いもこの差の一因となっている。業界データによると、2026年に韓国で販売された新車のおよそ4分の1がEVだったのに対し、日本では3パーセント(%)にとどまった。

業界幹部やアナリストによると、中国の自動車メーカーは何年もかけて販売店網を築き、現地の嗜好に合わせて車を改良する対応力を実証してきた。

これは自信と必要性の両方から生まれた戦略だ。中国は、競合他社が対抗しにくい価格で、世界でも最も技術的に進んだ車を生産している。だが、国内市場はブランドが乱立して飽和状態にあるため、メーカーは成長と利益を海外に求める必要がある。

「(中国自動車メーカーは)まず参入し、何が起きるかを見極め、徐々に戦略を調整していく」と、東京を拠点とするコンサルティング会社モビーインフォの創業者、廖静南氏は話す。

ロイターはこの記事のために、韓国と日本の両国で、企業幹部や販売店、EV購入者を含む10人以上に取材した。

<韓国での突破口>

市場調査会社カーイズユーによると、BYDは26年1月─9月に韓国で2万台超を販売し、トヨタ自動車と高級ブランド「レクサス」の合計販売台数を上回った。

ユジン投資証券のシニアアナリスト、イ・ジェイル氏によると、BYDは韓国で、安価なEVの需要拡大をうまく捉えることができた。米国とイスラエルによるイラン攻撃が始まって以来、ガソリン価格はほぼ10%上昇したが、現代自と起亜は主に高価格帯のEVに注力しており、3万ドル未満の車種はわずかしか提供していない。

「タイミングがBYDにとって最適だった」とイ氏は述べた。

吉利汽車傘下の最高級EVブランドを展開するジーカーは6月、SUV(スポーツ多目的車)「7X」の受注を韓国で開始し、年末までに最大14カ所のショールームを開設する計画だ。ロイターが確認した業界向け資料によると、奇瑞汽車(チェリー)は27年に韓国市場に参入する見通し。奇瑞はコメントを控えた。

小鵬汽車(シャオペン)は25年に韓国に現地法人を設立。リンクトインの求人情報によると、同社は現在、販売網を構築する人材を募集している。小鵬はコメントを控えた。

韓国の自動車メーカーは懸念を強めている。韓国自動車モビリティ産業協会のチョン・デジン会長は、韓国製EVへの税制優遇措置を求めている。

自動車メーカーは「非常に切迫している」と同氏は述べた。

<手ごわい日本市場>

日本市場は、中国メーカーの忍耐力を試す場となるかもしれない。

日本では、外国メーカーが乗用車販売に占める割合はわずか約6%で、トヨタが技術を先導してきたハイブリッド車が人気を集める。

日本と中国の関係は、中国に対してより強硬な姿勢を取る高市早苗首相の就任後、緊張が続いている。

今年の米ピュー・リサーチ・センターの調査によると、日本人の約88%、韓国人の約71%が中国に否定的な見方を持っている。販売会社BYDオートジャパンの広報担当者は、外交上の緊張は、日本におけるBYDの販売やショールーム来場、顧客からの問い合わせに特段の影響を与えていないと述べた。

BYDは23年に日本で車の販売を始め、今では販売店75店以上を展開し、最終的に100店舗まで拡大する計画だ。1─9月の日本での販売台数は4000台未満で、市場シェアはわずか0.1%にとどまった。

同社は26年7月、国内メーカーが圧倒する日本の「軽」自動車の分野に、外資として初めて日本独自の軽規格に合わせてゼロから設計したEVを投入した。9月時点で販売はわずか約650台だったが、BYDの日本での販売全体は毎年増加している。

「市場シェアではない。成長を見るべきだ」と、コンサルティング会社アルバレス・アンド・マーサルの山田マーク氏は言う。

奇瑞が出資する新興企業EMTの山本浩二最高技術責任者(CTO)によると、同社は27年前半に日本に軽自動車を投入し、29年までにさらに3モデルを投入する計画で、30年代までに日本での生産を目指すという。

ジーカーは日本で高級バンを投入する計画で、当初はタクシー会社や運転手付きサービス向けに狙いを定めていると、ジーカーの販売代理店フォロフライの小間裕康代表取締役は述べた。

当面、中国車を買うつもりがない人の一人が、桑原文雄さんだ。10年から日本製EVに乗ってきたが、中国車は信頼性がないという。個人情報を取られて利用されないか、懸念があると桑原さんは言う。

自民党の山際大志郎衆院議員はロイターに対し、日本は車外から遠隔操作される可能性がある中国車の安全上のリスクを考慮しなければならないと述べた。

日本の消費者が抵抗を続けるのか、それともソウル在住のコンテンツクリエイター、イ・ソンドンさんのように警戒心を乗り越えるのかは、まだ分からない。

「正直に言うと、私も中国車には良いイメージを持っていなかった」とイさんは明かす。

「でも実際に車を見て、運転してみたら、考えがかなり変わった」。結局、ドルフィンを購入したという。

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