ドローンを駆使してロシア軍に反撃する「ビバルディ作戦」を、ウクライナが公式に発表したのは9月中旬。この作戦によりウクライナ軍は東部ドネツク州リマン近郊の領土を奪還し、東部防衛線の要となる要塞都市群へのロシア軍の進撃を阻んだ。

重要なのは反攻作戦の成功だけではない。成功に向けてどう条件を整えたのか、そして、その手法が今後のウクライナ戦争の戦い方をどう変えていくのかにも注目すべきだ。

リマンはスラビャンスクとクラマトルスクの北側に位置する交通の要衝だ。ロシア軍は東部防衛線の包囲作戦の一環として、数カ月にわたりリマン周辺で進撃を試みてきた。

ビバルディ作戦はリマン北方でのロシア軍の進撃を大幅に抑え、包囲計画に打撃を与えた。ウクライナ第3軍団は、9月末までにこの作戦で176平方キロを奪還したという。

ビバルディ作戦でロシアのスラビャンスク進撃を阻む Institute for the Study of War
ビバルディ作戦でロシアのスラビャンスク進撃を阻む INSTITUTE FOR THE STUDY OF WAR

この作戦が注目に値するのは、単なる短期的な攻撃ではないためだ。大規模な準備をし、過去の教訓を生かし、複数の旅団を連携させるなど周到かつ大規模な軍事作戦だった。

作戦開始は今年5月だが、ウクライナ側は9月まで公表を控えていた。第3軍団によれば、数カ月に及んだ第1フェーズの目的は、その後の作戦に有利な条件を整えること。具体的にはロシア軍の防空システムや電子戦装備、砲兵部隊、兵站を攻撃し、ドローンの運用を妨害して、自軍の作戦意図を隠すことだった。

最終的にウクライナ軍は、前線だけでなくロシア軍の後方深くでも防御態勢を混乱させ、精鋭ドローン部隊「ルビコン」の一部を含む敵のドローン戦力を後退させた。これにより第3軍団は、作戦地域でドローン戦の優位に立った。

その後のフェーズでは、さまざまな戦力を連携させ、この優位性を攻勢につなげた。そこで活躍したのが空と陸のドローンだ。歩兵の進撃に先立ち、空のドローン部隊などが連携して敵のシステムを攻撃。地上ドローンは物資の輸送や地雷除去、火力支援を担った。さらに、空のドローンが地上ドローンを運び、ロシア軍の防衛線の背後に投下するという初の試みも行われた。

膠着した消耗戦の中でこの作戦が持つ意味

特筆すべきは、こうした多様な戦力の連携方法だ。ビバルディ作戦が際立っているのは特定の兵器システムの威力ではなく、革新的な戦術や手法によって従来の戦力と新たな戦力を巧みに組み合わせた点にある。

この戦術は、既にリマン以外の地域にも応用されている可能性がある。ウクライナ軍はドネツク州の他の防衛線の東方でも前進を続けている。

ただし、こうした戦術が戦争全体に及ぼす影響については議論の余地がある。この戦争で双方が直面する大きな課題の1つは、膠着した消耗戦を打破し、機動力を生かした戦いを復活させることだ。ビバルディ作戦は、互いの動きを監視しやすく、精密攻撃の標的になりやすい戦場でも、攻勢作戦の有効性を取り戻す方法があることを示唆している。

冬の到来を前に、ロシア軍はウクライナの都市やインフラへの攻撃を強めている。ウクライナ政府はプーチン政権が動員を拡大し、30万人の兵士を新たに投入すると主張する。

ビバルディ作戦の限定的な規模を考えれば、こうした動きが同作戦によって引き起こされたとは考えにくい。だが作戦は現在も続いている。

ウクライナ軍が同じ手法で再び成果を上げられるか、それともロシア軍がそれを阻止するのか。その結果次第で、ビバルディ作戦が局地的な成功に終わるのか、戦争の流れを変える転機となるのかが決まる

The Conversation

Chris Tuck, Reader in Strategic Studies, King's College London

This article is republished from The Conversation under a Creative Commons license. Read the original article.

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