Gleb Bryanski

[モスクワ 21日 ロイター] - ロシアはウクライナ支援を続ける欧州諸国への対抗措置として欧州企業への圧迫を強める一方、米企業に対しては締め付けを控えている。ロシア当局者や米企業関係者によると、これはロシアが米国との経済関係の構築を目指しているためだ。

ロイターが公式統計を分析したところ、トランプ氏が2025年1月に米大統領に就任して以降、ロシアのプーチン大統領が一時的な管理下に置いた外国企業20社のうち、米企業と関係があるのは3社にとどまり、残る企業は欧州企業の傘下だった。

ロシアの金融規制当局に近い関係者は、米国との交渉が進む中、対欧州企業で取っているような厳しい姿勢を米企業にも適用することは、ロシアにとって得策ではないと述べた。

米国のウィットコフ和平交渉担当特使 は21日、ウクライナ戦争の解決に向けた協議のため、サンクトペテルブルクでプーチン氏と会談した。ロシアのメディア各社によると、プーチン氏は米国との経済関係の回復に関心があると伝えた。

ウクライナとその同盟国は、米国がウクライナ支援を後退させていることに懸念を表明している。欧州各国の首脳がウクライナのゼレンスキー大統領への支持を相次いで表明する一方、トランプ氏はウクライナによるロシアの石油精製施設への攻撃を批判している。

ロシアは、今回の戦争で欧州がウクライナを支援し、「戦場での軍事行動に直接関与している」として、先月以降、スイスの食品大手ネスレ や仏小売り大手オーシャン、独小売り大手メトロ のロシア現地法人を管理下に置いた。また先週には、フランス、ドイツ、スウェーデン、ベルギーの比較的小規模な企業4社がロシア国内に保有する資産についても管理下に置いた。

ロシア大統領府のペスコフ報道官はこうした決定について、「企業の本国も判断の際に考慮した要因の一つだ」と述べ、これらの国は「ロシア資産の違法な収用」に関与していると説明した。

スイス経済省経済事務局の報道官は、入手可能な情報は、標的になっているのは米企業よりも欧州企業の方が多いとの見方を裏付けていると述べた。

<われわれにはトランプ氏がいる>

一方、ロシアとトランプ政権の関係は改善している。米国は今月、ロシア産軽油を購入する合意を発表。この数カ月に天然ガスを含む他の取引についても協議が行われている。さらにトランプ氏は17日、ロシア産品に対する主要な制裁や関税を免除する大統領令に署名した。

ロシア側の交渉担当者であるキリル・ドミトリエフ氏は今回の措置を「歴史的な瞬間」と評価した。ドミトリエフ氏はロシア直接投資基金(RDIF)の総裁を務め、米企業のロシア復帰や事業拡大を推進してきた。

ウィットコフ氏とトランプ氏の娘婿ジャレッド・クシュナー氏 は2025年2月にサウジアラビアの首都リヤドでウクライナ戦争の終結に向けた協議を開始したが、その中で、ロシアとの数十億ドル規模の取引の可能性を指摘し、プーチン氏に和平合意を促す材料として利用しようとしてきた。

ドミトリエフ氏は先週、ロシアと米国が近く新たな共同事業構想を発表すると述べ、戦争終結前であっても実現に向けた取り組みを進められる可能性があるとした。米国はこれまで、紛争が続く間は取引の実現は難しいとの立場を示してきた。

事情に詳しい関係者1人によると、和平交渉に反対する一部の当局者が、資産管理の対象とする米企業をさらに増やそうとする可能性があるという。

RDIFが現在、米国企業と結んでいる唯一の提携は、ニューヨーク市場に上場しているタイタン・インターナショナルとの共同投資案件で、両者はボルゴグラードのタイヤ工場に投資している。別の関係者によると、ドミトリエフ氏は非公式の場で、この案件をロシアで米国企業が事業を成功させている例として取り上げてきた。

モスクワに拠点を置く米企業関係者2人は、トランプ氏がロシアとの経済協力に意欲を示し、交渉が続いていることが、米国企業の利益を守ることにつながっていると述べた。

在ロシア米国商工会議所のロバート・エイジー会頭は昨年12月、欧州側の政策を背景に、欧州企業はロシアで事業を続けることについて米国企業よりも悲観的だと述べた。同商工会議所の推計によると、ロシアに残る米国企業は約300社。

エイジー氏は昨年、ロシアメディアに、「われわれにはトランプ氏がいるが、彼らにはいない。われわれの希望は彼にかかっている」と語った。

ロシアは侵攻開始後に進めた資産再配分の過程で、一部の中堅米企業も対象とした。ロシアが国内外の所有者から接収した民間資産は総額500億ドルを超えるとの報告もある。

欧州連合(EU)の欧州委員会は、米国企業と比較して標的となったEU企業の数が多いかどうかについてコメントを控えた。一方、最近のロシアによる資産接収は適正な手続きを欠いており、「事実上の強制収用に当たる」と主張している。

欧州委員会の報道官はロイターに対し、「これは明確な経済的報復のパターンに沿ったものだ」と述べ、今回の措置は「ロシアが企業活動にとって安全な環境ではない」ことを示していると指摘。「EUには対抗措置がある。強制収用によって利益を得ている者に制裁を科すことができる」と述べた。

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