Michel Rose

[パリ 19日 ロイター] - 近年で最悪となったフランスの騒乱は、マクロン大統領の任期末をさらなる混迷へと追い込んだ。財政的な余力もも政治的な求心力も乏しく、治安維持能力もますます脆弱になる中、社会的な憤りを抑え込めない政権の無力さが浮き彫りとなっている。

17日にフランス全土で起きた暴動では店舗からの略奪、建物の放火、公共施設の破壊が起き、マクロン氏に任期終盤で最も大きな課題を突きつけている。それは、もはや多くを与える余裕のない国家に対し、国民がさらなる支援を求めているという現実だ。

マクロン氏は10年近く前に大統領となり、硬直化したフランスの政治システムを刷新し、経済改革を加速させ、より断固とした大統領職を通じて権威を回復すると約束した。しかし、任期切れまで半年となった今、事実上「レームダック(死に体)化」した国家元首となったマクロン氏が率いるフランスは政治的停滞に陥り、深刻な財政的圧力に直面し、国家権威の限界を露呈した社会不安に苦しんでいる。

2018年から19年にかけて起きた政府への抗議運動「黄色いベスト運動」で、マクロン氏は数十億ユーロ規模の支出によって国民の怒りを鎮めようとした。今回はひっ迫した財政状況と分裂した議会のため、マクロン氏が使える手段は極めて限られている。

現在の行き詰まった原因は、マクロン氏が24年に国民議会(下院)を突然解散し、総選挙で敗北したことで自身の権威を弱めたことにあると指摘されている。

マクロン陣営の議員だったロイク・ケルブラン氏は短文投稿サイト「X」への投稿で「任期終了までの期間は、じわじわ続く苦痛になる」とした上で、「マクロン氏は24年に議会を解散するという荒唐無稽な決定により、国をまひさせてしまった。これは間違いなく第五共和制史上最悪の決定だと言えるだろう」と断罪した。

<ルペン氏の大統領への「高速道路」>

この混乱は、極右政党「国民連合(RN)」を事実上率いるマリーヌ・ルペン氏に有利に働く可能性がある。ルペン氏は既に27年の大統領選の最有力候補であり、生活水準の低下に対する怒りと、週末の暴力事件によって引き起こされた治安への懸念の両方から恩恵を受ける立場にある。

マクロン陣営の議員だったジャンバティスト・モロー氏はロイターに「ルペン氏はもはや選挙運動に資金を費やす必要はない」と指摘する。その上で「ルペン氏の前に広がるのは視界の良い道というだけではなく、6車線の高速道路だ」と表現した。

ルペン氏は18日、国民向けの動画声明でマクロン政権を崩壊しつつある権力として描き、自身こそが秩序を回復できる人物だと位置づけた。

その後、マクロン氏が国民向けに演説したが、具体的な措置はほとんど示さず、非常事態宣言の発令にも踏み切らなかった。演説の間も、パリの富裕層が住む地区を含めた略奪行為は2夜連続で続いた。これを受けてルコルニュ首相は19日、地域ごとの夜間外出禁止令を発令した。

元首相で大統領選出馬の準備を進めているエドゥアール・フィリップ氏は「大統領、昨晩の演説を拝聴しました」とXへの投稿。「何百万人ものフランス国民と同様、私も秩序を回復するための決断と取り組みを望んでいた」とした上でこう切り捨てた。「わが国には指導力が必要だ」

しかし、フィリップ氏はマクロン氏との過去の関わりを振り払うのに苦戦しており、最新の世論調査では極左指導者ジャンリュック・​メランション氏が決選投票進出を争うレースでフィリップ氏をやや上回っている。世論調査によると、決選投票がルペン氏とメランション氏の争いとなった場合には、ルペン氏の勝利がほぼ確実になるとみられている。

<相次ぐ危機の中で早期辞任を求める声>

フランス大統領府は19日、ヌニェス内相が提出した辞表の受け取りをマクロン氏が拒否し、情報収集と警察の態勢整備で明らかな不備があったことについての調査を命じたと発表した。これにより、政府が統制を取り戻すのに苦戦しているという印象がさらに強まった。

投資家らの間にも警戒感が広がった。市場アナリストらは、今回の暴動が政治リスクをさらに高めていると指摘する。フランスはすでに、増大する債務負担とユーロ圏でも最大級の財政赤字の削減をめぐり、市場の厳しい視線にさらされている。

マクロン氏は現在、歳出抑制を求める債券市場と、正反対の要求をするデモ参加者らとの板挟み状態にある。

「フランスにとどまるべきだ」との批判が噴出する中、マクロン氏は19日にクウェートに到着した。これは湾岸諸国歴訪の一環であり、マクロン氏はこの訪問が燃料供給の確保につながり、デモ参加者数を増大させている経済的圧力をいくらか緩和するのに役立つと主張している。

今回の歴訪にはリスクが伴い、大統領が国民の気持ちからかけ離れているという印象を強めることになる。16日夕に暴動が勃発した数時間前、マクロン氏はブリジット夫人とともに歌手セリーヌ・ディオンさんのコンサートに出席した様子が交流サイト(SNS)上で嘲笑の的となった。現実から遊離しているかのように描こうとする批判者らの格好の餌食となった。

与党陣営の一部で失望感が深まっていることを示すのが、マクロン氏が任期満了前に辞任すべきかどうかを関係者が公然と議論し始めていることだ。マクロン陣営の議員だったモロー氏は18日にマクロン氏と会談し、現在の政治的な手詰まり状態を打破し、任期切れまでの半年間の迷走を避けるために秩序ある早期退陣の準備を進めるよう促したと明らかにした。

モロー氏は「マクロン氏は諦めたくないだろう。それが彼の性格だからだ。だが国のためには、そうすべきだ」と強調した。

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