実物に実際に「触れる・考える」体験を

BtoB事業を中心にコーヒーを届けてきた三本珈琲は、現在、事業の中で生まれる食品ロスや未利用資源を活用した循環型食育にも力を入れている。

教材となるのは、製造時に生じる規格外のコーヒー豆やコーヒー麻袋、シルバースキンなどである。規格外品などの豆を使い、食の大切さを体感する「コーヒーブレンド体験」や、麻袋をアップサイクルして作ったトートバッグに絵を描く「麻袋バッグペイント体験」を展開するほか、地域の高校では探究学習を支援する「エシカル教育」も行っている。

コーヒーを作る時に発生する廃棄物を教材にして「もったいない」を学ぶ体験の機会を提供している
コーヒー麻袋をアップサイクルして作ったトートバッグに絵の具でペイントし、オリジナルバッグを作る「麻袋バッグペイント体験」の様子。コーヒーを作る時に発生する廃棄物を教材にして「もったいない」を学ぶ体験の機会を提供している。

特徴は、廃棄物や未利用資源について説明するだけではなく、参加者が実物に「触れる・考える」体験を組み込んでいる点にある。2021年4月から2026年6月までの食品ロス食育の参加者は4803人に達した。教材を活用した活動実績も、開始当初の2021年には8件だったが、企業、学校、地域団体などとの連携を積み重ね、2025年度には56件まで増えている。

地域コミュニティからの依頼も多く、子供から大人まで参加できることも活動の広がりを支えている。

規格外などのコーヒー豆を使って食の大切さを実感できる「コーヒーブレンド体験」は人気の食育啓発プログラムだ
規格外などのコーヒー豆を使って食の大切さを実感できる「コーヒーブレンド体験」は人気の食育啓発プログラムだ

さらに、自社の食品ロスを活用した製品の売上の一部から成る社会貢献活動費を原資とすることで参加費を無料とし、もともと食育への関心が高くない層にも参加の間口を開いている。取引先との共同開催によって啓発する側の担い手を増やし、同じ地域や場所で継続的に開催することでリピーターの増加にもつなげている。

注目すべきは、参加人数だけではない。参加者へのアンケートでは、食品ロスへの意識が「高まった」と回答した人が260人中249人(96%)に達した。食品ロスを知識として伝えるだけではなく、具体的な体験を通じて意識を動かすという狙いが、数字にも表れている。

循環型食育プログラム開始以降、パートナーシップによって活動範囲は大きく広がり、今後は実績を積み上げながら、2030年の製造活動における「廃棄物ゼロ」の達成を目指すとしている。

「もったいない」を、ただ捨てないための言葉で終わらせず、次の行動を生み出す学びへ変えていく。身近な一杯のコーヒーから始まる小さな気付きが地域へ広がり、一人一人の選択を変えていくならば、食品ロスは減らすべき課題であると同時に、より良い未来を考えるための「教材」にもなり得るのだ。

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