Richard Cowan

[ウォーレン(米オハイオ州) 14日 ロイター] - 2期目の折り返しが近づくトランプ米大統領だが、物価上昇やイランとの戦争、さらにその強硬な発言への懸念から、一部のブルーカラー層の男女の間で支持に陰りが見え始めている。

トランプ氏は2016年の大統領選で、かつて民主党支持の中核だった労働者層や労働組合員の支持の切り崩しに成功した。だが10年が経過し、民主党と労働団体の指導者らは、11月3日の中間選挙でこうした有権者の一部を再び取り戻せる可能性があると期待している。

かつて全米有数の激戦州として知られた中西部オハイオ州は、トランプ氏が16年の大統領選で、経済的不満に耳を傾けてくれると感じた労働者層の強い支持を集めて以来、共和党の牙城となった。1964年から14回連続、同州の勝者は大統領選でも勝利してきた。だが20年は民主党のジョー・バイデン候補が当選する一方で、オハイオ州ではトランプ氏が勝利していた。

そのオハイオ州で民主党が勢いを取り戻せば、共和党がトランプ政権最後の2年間も議会の支配権を維持できるか、それとも民主党が政権運営に影響力を持つかを左右する鍵になり得る。同州では今回の中間選挙で、共和党が上院議員の議席と州知事のポストの防衛を迫られ、下院選は2つの選挙区が接戦とみられている。1つは北西部の民主党地盤、もう1つは北東部の共和党地盤だ。

トランプ氏自身は今回の投票用紙には名前が載らないものの「自分が立候補しているつもりで投票してほしい」と支持者に呼びかけている。これが共和党候補にとって追い風になるのか、あるいは逆風となるのかはまだ分からない。

上院選では共和党現職のヒューステッド上院議員と、民主党の元職ブラウン氏が接戦を展開。州知事選では民主党のエイミー・アクトン氏と、共和党のビベック・ラマスワミ氏が争っている。

トランプ氏は12日、ヤングスタウンでヒューステッド氏とラマスワミ氏とともに集会を開き、共和党支持層の結束を図った。

<失望する有権者>

オハイオ州ウォーレン市で鉄鋼輸送業に従事しながら牧師も務めるポール・リングオルドさん(48)は、民主党が支持を取り戻そうとしている「迷える」労働者の典型的な一人だ。

主に黒人信徒が集う教会に所属するリングオルドさんは、16年にはトランプ氏、20年にはバイデン氏、24年には再びトランプ氏に投票した。だが今年の上院選や州知事選でどの候補を支持するかはまだ決めかねているという。

リングオルドさんは「今の私は荒野の中で居場所を探しているようなものだ」と胸中を明かす。トランプ氏を強く支持していた時期もあったが、燃料価格や食品価格の上昇、そして対立をあおるような政治手法に疑問を抱くようになったという。

インフレについては「私たちはこんな状況を望んで投票したわけではない」と述べた。

ロイターの取材に応じた複数の有権者と同様、リングオルドさんはトランプ氏の発言にも不満を抱いている。「あの昔ながらのニューヨーク流の『やってやったぞ』というような強気な言い回しをもう少し穏やかにしてほしい」と語った。

<期日前投票では民主党優勢>

先週始まったオハイオ州の期日前投票では、民主党支持者の方が共和党支持者よりも高い意欲を示しているようだ。ウォーレン市を抱え、多くの製造業労働者が住むトランブル郡では、投票開始から最初の3日間で民主党支持者1224人、共和党支持者559人、無党派層453人が投票したことが郡のデータで明らかになった。

保守系シンクタンク、ハドソン研究所の上級研究員でオハイオ州を拠点とするポール・スラチック氏は「トランプ氏から気持ちが離れつつある労働者層にとっては、ブラウン氏は彼らにとって安心して支持できる候補だ」と指摘する。ブラウン氏は上院議員時代から庶民重視の政治姿勢で知られているからだ。

全米鉄鋼労働組合の幹部で、労使交渉や労働問題を担当するホセ・アロヨ氏は「トランプ氏は社会問題に焦点を当てることで労働者層の支持を集めることに成功した」と語る。

アロヨ氏によれば、トランプ氏は年金の縮小や工場閉鎖、長年の生活基盤の喪失など労働者が抱える不満を巧みに取り込んだ。しかし問題は、社会問題ばかりを重視し、労働者の生活を改善する政策や法案を実際に成立させることができていない点だという。

米労働統計局によると、ヤングスタウン・ウォーレン地域の製造業雇用は、1990年の約5万人から26年には約2万人へと減少した。

近年、鉄鋼と自動車産業の一大拠点だったマホニング・バレーには新たな工場も進出している。アロヨ氏は、イランとの戦争によって米国内の石油開発が活発化し、鋼材需要が増えたと述べた。ただ一方で、その戦争が消費者物価を押し上げたことも認めている。

<NLRBの機能解体>

トランプ氏は25年1月の第2次政権発足直後、全米労働関係委員会(NLRB)の民主党系委員ら2人を解任した。その結果、同委員会は意思決定に必要な定足数を欠き、不当労働行為などを巡る審理・判断に支障が生じた。

オハイオ州労働総同盟産別会議(AFL-CIO)のティム・バーガ会長は、トランプ政権による「NLRB解体」が労働組合の組織化を妨げ、不当労働行為への対抗や企業との労働契約締結を困難にしたと批判する。

バーガ氏は「バイデン前政権下では、私の人生で初めて全国的な産業政策が導入される方向へ進んでいた」と振り返るが、トランプ政権はその多くを撤回した。またバーガ氏は、トランプ政権によるカナダとの通商摩擦も労働者にとっては好ましくなかったと付け加えた。

<根強いトランプ氏擁護派も>

オハイオ州コートランド在住で民主党支持を自認するビル・キャラハンさん(75)は、以前はトランプ氏を支持していた親族の一部が民主党へ戻りつつあると話す。その理由は「政治家によって懐のお金を奪われることを嫌っているからだ」と説明した。

ゼネラル・エレクトリックを退職後、現在は倉庫でパート勤務をしている同氏は、16年にはトランプ氏への投票も考えたが、倫理面への懸念から見送ったと述べた。

それでも物価上昇だけでは投票行動を変えないという有権者もいる。同州ウェルズビル在住で、石炭火力発電所を退職したチャック・バーンズさん(67)は、トランプ氏について「不法移民を減らし、私の退職資産の価値を高めてくれた。よくやっている。度胸がある」と評価した。南部国境での移民規制強化も称賛して「バイデン政権が終わってから私の資産運用残高は増えた」と述べた。

今回の選挙で最も懸念している問題を尋ねられると、バーンズ氏は「民主党がやろうとしていることの幾つかは信じられない」と答え、その具体例を求められるとトランスジェンダー問題を挙げた。

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