Anton Bridge
[東京 14日 ロイター] - ソフトバンクグループが9月に発行した投機的級(ジャンク)の社債は、利率が同社として過去最高の9.75%、発行額も過去最大の110億ドル(約1兆7400億円)となった。調達資金は生成AI(人工知能)を手がけるオープンAIへの追加投資に充てたが、市場では賭けの規模に加え投資先の集中リスクを懸念する声も出ている。孫正義会長兼社長には、AI投資で高いリターンを示すことがこれまで以上に求められている。
今年は米アマゾン・ドット・コムや米アルファベット、中国の騰訊控股(テンセント・ホールディングス)など、世界のテック大手が相次ぎ大型起債をしている。その中でも、対話型生成AI「チャットGPT」を運営するオープンAIに計646億ドルを投じるソフトバンクGは、AI投資への市場の期待と不安を映す存在となっている。
ソフトバンクGはこれまで、新たな投資資金を捻出するため半導体大手エヌビディアや米TモバイルUSなど保有株を売却することが多かった。それが今回は、将来の値上がりが見込まれる資産を手放さず、最高9.75%の高利回り社債で資金を調達する道を選んだ。
「ビジョン・ファンド」を運営するソフトバンク・インベストメント・アドバイザーズのアレックス・クラベル最高経営責任者(CEO)は、「借り入れを行った大きな理由は今後も価値が高まると考える資産を売却したくなかったためだ」と説明。「オープンAIのこれまでの値上がりを考えれば、9.75%の調達コストは十分に正当化される」と述べた。
孫氏はこれまでも、中国IT大手アリババや英半導体設計大手アームへの投資で大きな利益を上げてきた。アームの時価総額は2023年の上場以来5倍に拡大。未上場のAI関連投資先についても、今後上場が進めば資産価値が顕在化し、資金回収や再投資が進みやすくなる。
一方、オープンAIのサム・アルトマンCEOは、AIの安全性に対する懸念の広がりから今年は株式を上場しない方針を示している。また、同社は米アンソロピックをはじめとするAI企業や大手クラウド事業者、低コストの中国勢との競争にも直面している。
ソフトバンクG株は6月に上場来高値となる8632円を付けた後、38%下落した。信用リスクを示すクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)は、同じ期間に24%上昇した。9月に発行した34年償還の社債の利率9.75%は、アルファベットが8月に起債した33年償還債の5.2%を大きく上回る。
アナリストらは、特定の投資先に資金を集中させる同社の戦略に対する投資家の見方を反映しているとみている。
同社株の売りを推奨しているアシンメトリック・アドバイザーズのアミール・アンバルザデ氏は、「賭けの規模はかつてないほど大きい」と指摘した。マールボロの債券ポートフォリオマネジャー、ジェームズ・アセイ氏は、スプレッド(利回り格差)の縮小によってハイイールド債の投資妙味は薄れているとの見方を示し、「ソフトバンクGは極めて積極的な投資姿勢を取り、一部案件への依存度も高い。投資先として真っ先に検討する銘柄ではない」と話した。
こうした見方にソフトバンク・インベストメント・アドバイザーズCEOのクラベル氏は、「オープンAIへの支援は両社の深いビジネス上の結び付きを反映したものだ」と説明。「オープンAIはパートナーで、財務的なリターンや戦略的な価値をもたらす関係を築いている」と語った。
オープンAIはデータセンター開発会社SBエナジーに出資しており、同時に顧客でもある。ソフトバンクGはSBエナジーの上場を検討しており、500億ドルの評価額を目指す可能性があるとロイターは報じている。
MSTファイナンシャルのアナリスト、デビッド・ギブソン氏は、この評価額について、「ソフトバンクGはAI関連への大きな期待を追い風にしている。収益規模に比べて極めて高い評価額を付け、その価値を現金化しようとしている」と指摘した。
孫氏は数十年にわたり、市場の浮き沈みを乗り越えながらソフトバンクGを時価総額30兆円規模の企業に成長させてきた。アリババへの投資では巨額の利益を得た一方、米シェアオフィス大手ウィーワークには160億ドルを投じたものの、新型コロナウイルス流行下の2021年に経営が悪化。その後に経営破綻した。22年には世界的な利上げ局面で投資先の企業価値が急落するなど、痛手も経験している。
クラベル氏は「オープンAIのこれまでの価値上昇は、21年に行った投資の損失をはるかに上回っている」と述べた。
モーニングスターのシニア・エクイティー・アナリスト、ダン・ベーカー氏は「現在は人間が担っている業務の多くをAIが代替するとの期待が株価に織り込まれている」と指摘。「その変化が実現するのであれば、ソフトバンクGの投資が大きな成功につながる可能性は高いだろう」と語った。