<認知症のリスクは、今からでも減らすことができる…睡眠、ワクチン、学習習慣など、脳の健康を守るための最新研究と、今日から実践できる予防策を紹介した話題書『医者が教える一生パフォーマンスする脳』(下畑享良・著、日経BP)の第1章「認知症の正体とは」から一部抜粋。>
認知症、中でもアルツハイマー病は、女性に多くみられます。女性のほうが長生きであることは、その大きな理由のひとつです。
しかし、厚生労働省の資料では、同じ年齢層で比べても、とくに高齢層では、女性のほうが認知症の割合が高いことが示されています。つまり、女性に認知症が多い理由は、寿命の差だけでは説明しきれない可能性があります。
では、なぜ女性のほうが認知症になりやすいのでしょうか。これには長らく、はっきりした答えがありませんでした。けれども近年、その謎を解くいくつかの重要な手がかりが見つかってきました。その鍵は、「神経炎症」です。
2025年Alzheimer’s & Dementia誌に、亡くなった方の脳を調べた研究が発表されました。この研究では、アルツハイマー病の女性の脳で、記憶に重要な海馬の一部に、神経炎症を示す目印がとくに多く認められました。
一方、男性では、このような明らかな差はみられませんでした。さらに女性では、神経炎症が強いほど、タウの蓄積も多いという密接な関連が認められました。男性では、この関連は確認されませんでした。
つまり、女性のアルツハイマー病では、神経炎症とタウの蓄積が互いに関連しながら進みやすい可能性があります。これが、女性の脳がアルツハイマー病の影響を受けやすい理由のひとつかもしれません。
ただし、炎症がタウの蓄積を促すのか、タウの蓄積が炎症を引き起こすのかは、この研究だけではわかりません。
もうひとつの手がかりは、アミロイドベータを片づける力の差です。女性では、「ミクログリア」という脳の掃除をする細胞が、アミロイドベータを脳内から取り除く働きが弱くなっている可能性を示す報告も、同じ2025年に発表されました(1)。