<AIによる貿易書類の偽造、暗号資産を使った巨額の資金移動、海外口座の遠隔操作。ロシア企業A7が築いた制裁逃れの仕組みと、アメリカがその「影の決済網」に突き付けた異例の制裁の中身とは──>

アメリカが、本気でロシアやイランの制裁逃れを潰しにかかろうとしている。

10月1日、米当局はロシアの金融サービス企業「A7」に制裁を科した。今回の制裁はこれまでとは狙いが違う。個々の企業や人物にではなく「影の決済ネットワーク」そのものを標的にしたのだ。

これまで、ロシアとイラン両国による「制裁逃れ」「影の船団」という言葉を頻繁に聞いてきた。しかし、制裁を逃れて原油や武器関連品、軍民両用(デュアルユース)技術などを国際的に売買したとき、そのお金をどう動かし、どう決済しているのかは、あまり知られていなかった。

制裁の網をかいくぐり、国境を越えて巨額の資金を動かす。そのための仕組みこそが、シャドーネットワークである。

米当局はA7に制裁を科すと同時に、世界の金融界にも警告を発した。これは、今後、A7と取引する第三国の金融機関に対して、二次制裁的な措置を取る可能性を示唆するものでもある。この警告によって、世界中の金融機関は、A7とつながる企業や口座を見逃していないか、制裁対象者の確認や資金の流れを監視するコンプライアンス体制の見直しを迫られることになるだろう。

米財務省は、「イランやその他の敵対勢力が制裁を回避し、不正な資金を移動させ、世界金融システムの健全性を損なうことを可能にする金融インフラを解体している」と述べた。

さらに、米当局はA7を「国際犯罪組織(TOC)」に指定した。TOC指定は、重大な国際犯罪に関与する組織などに対して使われる強力な制裁手段であり、過去にはメキシコの麻薬カルテルやイタリアのマフィア、ロシアの武装組織ワグネルなども対象となっている。

ロシア企業「A7」とは何か、何をしていたのか

A7はロシアの企業で、2024年9月に設立。国際送金が可能で、IT技術を使った便利な金融サービスを提供するフィンテック企業だと説明されていた。株式は、イラン・ショルというイスラエル・モルドバ国籍のオリガルヒ(大富豪)が51%、ロシアの軍事セクターに融資を行う国有銀行プロムスビャズバンクが49%の株式を保有していた。

イラン・ショルとは何者か
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