Well-Being事業開発室の関慧起氏によれば、きっかけは若手社員からの「オフィスで体を動かしたい」「スポーツジムをここにつくってほしい」といった、ある意味では突飛なアイデアだったという。そこから「ジム」を、身体だけでなく知識やコミュニケーションを含め、人と組織が成長する場所という意味へと広げた。
実際の空間にも、そのコンセプトが反映されている。フロアには陸上競技のトラックを思わせるラインを走らせ、会議室などのサインにはスポーツをモチーフにしたピクトグラムを配置。自然と歩きたくなる回遊性を持たせながら、コミュニケーションエリアやリフレッシュスペースを設けた。
さらには、光や音、緑、温熱といったWELL認証の考え方を随所に取り入れ、照明や音によって作業エリアとリラックスエリアの雰囲気を切り替えるなど、五感に働きかける環境がエビデンスに基づいて実装されている。
もっとも、製造現場のオフィスは、都市型オフィスのように自由にレイアウトを変えられるわけではない。今回の奈良工場でも、CAD作業やはんだ付け、各種実験など、固定席や専用設備を必要とする業務があり、さらには今後の人員増加も見据え、工場側にはできるだけ多くの座席を確保したいという思いもあった。
しかし、プロジェクトメンバーとの対話を重ねるなかで、交流やリフレッシュのための空間が新しいアイデアや業務改善につながることを理解。「結果として、働く環境そのものが生産性向上に寄与するというような考え方を工場内のメンバーにも共有することができました」と、森田氏は振り返る。