Anousha Sakoui Echo Wang

[ロンドン/ニューヨーク 1日 ロイター] - 世界の企業合併・買収(M&A)は2026年第3・四半期の取引総額が9930億ドルとなり、第2・四半期から41%減少した。LSEGのデータによると、四半期の取引額が1兆ドルを下回るのは25年第2・四半期以来。

第3・四半期に発表された100億ドルを超える大型案件は10件にとどまり、24年第4・四半期以来の低水準となった。100億ドル超の案件には、イタリアの銀行バンカ・モンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナによるバンコBPM への320億ドルの買収提案や、南アフリカの産金大手ゴールド・フィールズ による豪ノーザン・スター・リソーシズ への257億ドルの買収提案などが含まれる。

ただ年初からの世界のM&Aは、案件数こそ8%減少したものの、取引総額は前年同期比28%増の3兆9000億ドルと、01年以来の高水準となった。

ゴールドマン・サックスで欧州・中東・アフリカ地域のM&A共同責任者を務めるカーステン・ウォーン氏は「企業は引き続き規模の拡大と、自社が進出していない市場、技術へのアクセスを求めている」と指摘。現在のペースが続けば、年間のM&A総額は21年の過去最高を上回るとの見通しを示した。

同氏は「大型案件は続いており、夏以降も目立った動きが見られる。企業の取締役会では、戦略的な案件を実行する必要性が一段と強く認識されている」と述べた。

テクノロジー分野への歴史的な規模の投資もM&Aを支えている。今年これまでの世界のM&Aの約4分の1を、テクノロジー企業への戦略的な出資が占めた。今年に入り、対話型人工知能(AI)「クロード」を手がけるアンソロピックと、「チャットGPT」を開発するオープンAIはいずれも投資家から数百億ドルを調達した。

米国と欧州のM&Aが第3・四半期に大幅に減少したのに対し、アジア太平洋地域の取引額は2420億ドルと、第2・四半期比8%増、前年同期比では36%増加した。

また年初からのプライベートエクイティー(PE)関連の世界のM&Aは、金額ベースで統計をさかのぼれる1980年以来の最高水準となった。ただ第3・四半期に限ると前年同期から減速した。国境をまたぐクロスボーダーM&Aも活発で、年初からの取引額は前年同期比32%増加した。

JPモルガンのM&Aグローバル責任者チャーリー・ブーカート氏は「ドル高を生かし、これまで欧州での買収を検討してこなかった米企業の間にも相応の意欲が見られる。逆に、より高い成長機会を求めて米国への投資を検討する動きもある」と解説した。

新規株式公開(IPO)の活発化もM&Aを後押ししており、特にテクノロジー企業では、上場によって得た株式という新たな買収手段を使い、競合企業を取り込む動きが出ている。米宇宙開発企業スペースX はナスダック市場への大型上場で企業価値が2兆ドルを超えた数日後、AIを活用したコーディングサービスを手がける新興企業カーソルを買収した。

モルガン・スタンレーのM&Aグローバル責任者ジョン・コリンズ氏は「企業規模を拡大することで、AIを巡る変化によりうまく対応できる可能性があることが、M&Aを促す要因の1つになっている」と述べた。

スペースXが6月に実施したIPOなどを背景に、年初から世界で実施されたIPOによる調達額は、特別買収目的会社(SPAC)を除いて2150億ドルに達した。案件数は前年同期を下回ったものの、調達額は21年以来の高水準となった。

第3・四半期の株式発行による調達額は2840億ドル。第2・四半期の世界の株式資本市場での調達額に比べ26%減少したが、25年第3・四半期からは39%増えた。韓国SKハイニックスや米インテルによる株式売り出しなどが寄与した。

一方、一部の銀行関係者からは、テクノロジーやAI関連の案件に対して投資家が慎重になり始めているとの声も出ている。BNPパリバで株式資本市場のグローバル責任者を務めるアンドレアス・ベルンストルフ氏は「10日ほど前までは中間選挙を気にしている人はほとんどいなかったが、軽油価格や金利が上昇し、政治の方向性が変わるリスクもあるため、慎重姿勢が強まっている」と述べた。

それでもJPモルガンのブーカート氏は「AIなどの強力な長期トレンドが案件をけん引しており、27年も活発な年になると予想している」と先行きに自信を示した。

​

​

Reuters Copyright (C) 2026 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。